ババン時評 「裸の王様」憲法9条

 

安倍三選内閣は、本気で憲法改正に取り組むのか。憲法9条は、一般国民にとって難解な代物だ。それは、一般人の、新聞を読めるていどの“国語力レベル”で理解できないほどに憲法の条文解釈を難しくする人たちがいるからだ。

アンデルセンの童話「裸の王様」は、ペテン師に騙されて、「バカには見えない布地」で織った新しい衣装を身に着けた王様が、お披露目のパレードに出た。お付きの大臣らはすでに「バカには見えない」立派な衣装を“賞賛”しており、見物の民衆も、下着だけの王様に戸惑うものの、やはり「見えない」と言えず讃嘆の声を上げる。そんな中で、一人の少年が「王様は裸だ」と叫ぶという話だ。

憲法第9条を素直にみると、第1項の「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する」ことは崇高な理想だと解る。だが、残念ながら現実世界においては、「正義」と「秩序」が大いに乱れて「国際平和」があやしくなり、それをわが国が「誠実に希求」することがむなしくなる状況だ。

次の、「国権の発動たる戦争」は、国の権利を発動・主張しない戦争などないだろうと簡単に読めば、問題はその後の「武力による威嚇」だ。これは現在、北朝鮮のぼんぼんやトランプ米大統領がやっているやり口で、そこから攻撃に踏み切れば「武力の行使」となる。そういうやり方を、わが国は、「国際紛争を解決する手段としては永久に放棄する」という。つまり意味するところは“戦争の全面否定”である。

それを受けて第2項は、「前項の目的」すなわち戦争放棄を達成するために,「陸海空軍その他の戦力を保持しない」うえに、「国の交戦権を認めない」、つまり戦を交える権利を認めないと言う。これが素直な目で見た「裸の9条」である。要するに、「裸の王様 憲法9条」は、本来、弱気な平和主義者だったのだ。

こうしてわが国は、世界に例を見ない長寿の憲法、「弱気の王様 憲法9条」に、「バカには見えない衣装」を着せるように、強気にさせる“論理の着せ替え”を重ねてきたのである。北朝鮮の狂気、覇権国家 中国の脅威などが増している中で、“現憲法死守”を唱える憲法学者や政治家もいるが、今こそ国民の「国語力レベル」で真面目に9条の改正を考えるべき時ではないか。

同テーマの小論が山崎義雄のHP「ババンG」にあります。のぞいて見て下さい。   (2018・9)