ババン時評 論拠を持たない?ネット右翼

活字媒体は、書き手はもちろん読み手にもそれなりのアタマ力が要求されるだけに敬遠され、読者離れが止まらない。という話は前にも書いたが、ネット社会の「ネット右翼」の間でも、活字媒体を活用する「ネトウヨ」より、もっぱらツイートを読んで反応する「ネトウヨ」のほうが多いようだ。

朝日新聞(10・5)の「ネット右翼検証」記事によると、不思議な話だが、保守思想を持たない「ネット右翼」がいるらしい。これは、東北大准教授らの8万人アンケート結果の紹介記事である。分析結果は少々ややこしいので、解釈が間違っていたら「ごめんなさい」だが、どうも、こんなことのようだ。

ネット右翼を大きく分けると、「排外主義的傾向があるグループ」(21.5%―中韓への否定的態度や保守的政治志向などを持つ)、「ネットで政治的議論をするグループ」(20.2%―靖国参拝憲法9条などを論議する)、「政治的保守志向がある」(12.8%)の3グループがある。さらにこの3グループにまたがるヘソの位置に、「第4のグループ」(4.7%)がある。

この第4グループを当アンケートでは「中心的ネット右翼」と見ているらしい。そしてこの第4グループをさらに分けて、「保守思想を持つグループ」(1.7%)を中心的な「ネット右翼」と見る一方、「保守思想を持たないグループ」(3.0%)を「オンライン排外主義者」(オンライン上において排外主義的態度を取る者)と見ているようだ。

つまり「保守思想を持つ」ネトウヨより、「保守思想を持たない」ネトウヨの方が多いことになる。そして面白いのは、前者「保守思想を持つ者」は活字媒体を活用し、後者「保守思想を持たない者」は口コミを重視する傾向があるというのである。

誤りを恐れずに言えば、中核的ネット右翼の多くは、口コミ、ツイート記事を主に参考にしながら中韓への否定的態度や保守的政治志向などを表明しているということになる。活字とネットの特質について考えさせられるものがある。(2018・10 山崎義雄)