ババン時評 「徴用工問題」と「国家の信義」

「あの国には近代化する能力がない。朝鮮は日本に併合されるべきだ」とセオドア・ルーズベルトが言ったのは、日露戦争前の1903年である。自力でできなかったから、結局、併合して日本が近代化してあげた。大変な金を使って工業のインフラや教育のインフラを作ってやったが、いまだに恨まれている。(宮崎正弘×渡辺惣樹著「激動の日本近現代史」)

同書は、一章を割いて、アメリカが朝鮮の近代化に手を貸すことを諦めた経緯や、「日本とアメリカが作った朝鮮開国」を論じている。これについてはいろいろな論議があろうが、この度の徴用工問題における韓国の姿勢については、近代国家、民主主義国家としての信義を疑わざるをえない。

朝日新聞(10・31)の社説では「徴用工裁判」を取り上げ、「蓄積を無にせぬ対応を」と言いながらも、『政府が協定を巡る見解を維持するのは当然としても、多くの人々に暴力的な動員や過酷な労働を強いた史実を認めることに及び腰であってはならない。』という一節を盛り込んでいる。前段の「当然」は当然だが、後段の「史実」なるものには少なからず疑問があり、いかにも朝日的解釈の“付け足し”だ。

ともあれ、問題は、政権が変わったからといって近代国家同士の約束である請求権協定を反故にしかねない文在寅政権の動きだ。安倍政権が強く抗議しているのは当然だ。信義を重んじない国とはまともな外交も協調も成り立たない。(2018・11・5 山崎義雄)