ババン時評 どうなる?日本の飲み水

 水道法改正案の成立で水道事業の民営化がスタートする。「水と安全はタダ」だという日本の“神話”は過去のものだ。今ではだれでも水と安全の確保は高くつくことを知っている。その事業を利潤追求の民間企業に任せるという。

世界には、安全な飲み水を得られない国が増えている。水資源の汚染や不衛生な生活用水も問題だが、それさえも飲めない国が増えている。近い将来、安全な飲み水を得られない人々は世界人口の2/3になるともいわれる。

そうした国や都市に、その災厄をもたらしている悪徳水道ビジネス事業者がいる。行政の側は、民営化で、下水処理施設の設備コスト、施設の維持・運営コスト、人的・経済的コストから免れると考えるが、地域独占営利企業による民営化はたちまち水道料金の値上げにつながり、市民生活を襲う。

いま読まれている本に「日本が売られる」(堤未果幻冬舎刊)がある。本書では、日本が売られる多くの品目?の、いのⅠ番に「水が売られる」という。本書によると、「日本の水道バーゲンセール」の口火を切ったのは、当時の麻生太郎副総理が、米国ワシントンのシンクタンクで、日本の水道はすべて「国営もしくは市営、町営でできていて、こういったものをすべて⋯⋯民営化します」と発言したのが始まりだという。

同書や新聞等によると、英国調査機関調べでは、2000年から2015年の間に、世界37カ国235都市が、民営化の結果、水道料金の高騰や水質悪化などでうまくいかず、再び公営に戻している。しかも莫大な請求書が突きつけられる。ベルリンの場合は、運営権を買い戻すために12・5億ユーロ(約1600億円)かかったという。日本の水道民営化が進めば、これを地方自治体が負担することになる。

同書から、信じがたい悲喜劇をひとつ紹介する。民営化して米資本のべクテル社に運営を委託したボリビアの例である。貧困地区の水道管工事は一切やってくれない。水道料金は月収の1/3。払えない住民が井戸を掘ると、「水源が同じだ」として料金を請求してくる。住民が公園の水飲み場を頼りにすると蛇口に「使用禁止」。バケツに雨水を溜めると、(理由は分からないが)1杯につき数セント(数円)徴収されるという。

さて、日本の水道は、これからどうなる?(2018・12・5 山崎義雄)