ババン時評 「ボーっと生きてんじゃねーよ」

 

暮れになって、今年も恒例の流行語大賞が発表された。第35回になるという「ユーキャン新語・流行語大賞」だ。大賞は “氷上のお掃除屋さん” 北海道のカーリング・チームの合言葉?「そだねー」となった。

ネットをのぞいたら、「ネット記者」なる人が、「新語・流行語大賞の半分くらいがわからない→「ご飯論法」「ボーっと生きてんじゃねーよ」ってなに?と言っていた。ついでだから大賞選考前の30のノミネート用語を見直したら、意味の分からなかったものが10個ほどあった。ネット記者氏よりは知っていたことになる!

ご飯論法」をネットで見たら、国会答弁の悪質な論点ずらしをネットで指摘した上西充子法政大教授の話を受けて、ブロガーの紙屋高雪氏が命名したものだとか。上西教授は、具体的な国会答弁を例示したうえで、こうツィートしたらしい。

Q「朝ごはんは食べなかったんですか?」A「ご飯は食べませんでした(パンは食べましたが、それは黙っておきます)」

Q「何も食べなかったんですね?」A「何も、と聞かれましても、どこまでを食事の範囲に入れるかは、必ずしも明確ではありませんので・・」

笑える。“ご飯”の範囲で、語義の広い日本語の特性を論理のすり替えに“活用”している。論点ずらしの指摘は小気味いいが、「ご飯論法」のネーミングも秀逸だ。

笑えるのは「ボーっと―」も同じだが、こちらは深い意味はない。NHK番組「チコちゃんに叱られる」で、頭デッカチのかわいいチコちゃん人形?が、出演タレントが答えに窮すると、途端に厳しい顔をして「ボーっと生きてんじゃねーよ」とカマす。ボーっとテレビを見ている私のような半ボケ老人まで笑ってしまう。

しかしこの啖呵、上司が部下に言ったらパワハラ、若い者に言われたら怒りか屈辱感、こわもてのお兄いさんに言われたら恐喝で、笑ってばかりはいられない。やはりこれは流行語になってもらわない方がよさそうだ。(2018・12・11 山崎義雄)