ババン時評 “客引き国家”ニッポン

 

昨年、安倍政権の念願だった通称「カジノ法」が成立した。この、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法は、経済成長の重要な柱として、(安倍首相に)期待されている。しかし、ほとんどの野党は、賭博依存症の増加や資金洗浄などの懸念から猛反対した。

いま売れている「日本が売られる」(堤未果著、刊)では、「ギャンブルが売られる」例を挙げて、政府は、カジノ賭博で大幅な外国人誘致を見込むが、実際は8割が日本人となり、賭博場運営は海外のカジノ大手業者が中心となり、投資はウォール街の投資かたちが中心となると言う。

いますでに、2020年以降とみられる政府のカジノ基本計画の策定をにらみながら、大手カジノ事業者のラスベガス・サンズが、有力候補地の大阪府・松井知事に売り込みをはかったとか、トランプ大統領が安倍首相に“商談”を持ちかけたとか、活発な動きが報じられている。

昨年のカジノ法論議が盛り上がっていた当時、20年ほど前にカジノ賭博で名を挙げた?大王製紙元会長井川意高氏がテレビに出ていて、賭博にハマった経緯を淡々と語っていた。最初は家族旅行の折りにカジノに立ち寄り、100万円掛けたら2000万円になったのが病みつきの始まりだったという。2度目は200万円を持って出かけ、たちまち掛け金はウン千万円から億の単位になった。現地では顔がきくようになり、しまいにはホテルのスイートルームをタダで提供され、いくらでも掛け金を借りられるようになっていた。会社のカネの横領がバレた時には100億円超をつぎ込んでいた。これでは系列会社からまで掛け金を“徴収”しなければ間に合わなくなったわけである。

依存症対策では、安倍首相も公明党や野党に気を使って日本人の入場回数や掛金の制限などの対策を打ち出したが、先の井川氏は、日本でカジノが開設されれば日本人の賭博マニアが増え、日本ではすぐに顔を覚えられたりしてやりにくくなるので、自分と同じようにたちまちシンガポールマカオに出向くだろうと言っている。“専門家”が言うのだからこの予想は当たりだろう。

カジノ開設に向けてよほど褌を締めてかからなければ、いいように日本がカモられ日本人が病むことになる。それにしても、私などモノづくり日本を大事に思う者としては、観光立国とか観光大国などという旗印にさえ違和感を覚えるが、カジノ開設でこれ以上節操のない“客引き国家”ニッポンに堕落することだけは我慢ならない。いまからでもなんとかならないものか。(2019・1・6 山崎義雄)