ババン時評 “ワキの甘い”日本?

テレビ番組などでは、日本びいきの外国人が少なくない。それに反して国際社会での日本の評判は、経済以外の政治・外交レベルであまり芳しくない。例えばゴーン元日産会長の初公判が開かれたが、フランスはじめ海外メディアの論調はゴーン寄りだ。

ここでゴーン氏の話を書きたいわけではないが、フランスの反応は当然としても、他の海外メディアの反応も、ゴーン氏の主張や立場に理解を示したり、日本の司法における人権上の疑問や拘留ルールの後進性に疑問を呈するものが少なくない。

書きたいのは、海外の“一般庶民”の日本観である。いま読まれている「日本が売られる」(堤未果著、幻冬舎刊)にこんな話がある。著者が取材した26歳の元米兵ブレイザーが語った。「日本には前から行きたかったんだ。水と安全がタダで、どこへ行ってもおいしい食べ物があるなんて最高だ。災害の時でも略奪しないで行儀よく列に並ぶ日本人の姿をネットで見た時は、本当に衝撃的だった。俺の友人にも、日本に住みたいって言うやつがたくさんいるよ。日本は今人手が足りなくて、外国人でも3カ月住めば医療保険に入れるんだろう? 病気になると破産するリスクがあるアメリカにいるより、日本で仕事を見つける方が心配なく暮らせるだろうな」。

政治・外交レベルではあまり高く評価されない日本だが、海外の一般人から見ると日本はそう見えるらしい。片や外国では、先進国といえども一般庶民は政治に虐げられ、厳しい生活を強いられているのではないか。それに比べて日本は、国家財政がピンチ、昨年も所得その他の格差拡大が問題となり、今年は消費税増税で生活が圧迫されるなど、問題山積だとされるのだが、どうも欧米先進国の国民生活に比べれば日本はまだマシなほうで、恵まれているのではないか。

ひょっとして、海外から見れば、日本は国にも国民にも緩みのある、“わきの甘い”国なのではないか。そんな日本に、出稼ぎや移住を望む外国人が流入する。歓待すべきか否か。日本の姿はどうあるべきか。今日本のどこかがおかしくなりつつあるのではないか。手におえない疑問が湧いてくる。(2019・1・10 山崎義雄)