ババン時評 どこまで続く「貧富の格差」

 

貧富の格差はどこまで拡大するのだろうか。報道によれば、国際NGO「オックスハム・インターナショナル」のレポートでは、2018年に世界で最も裕福な26人の資産の合計が、経済的に恵まれない世界人口の下位半分(約38億人)の資産合計とほぼ同じだという。

そこで同団体は、富裕層への課税強化が必要だと提言する。かりに世界の富裕層1パーセントの資産に0.5%の課税強化をすれば、年4千億ドル(約44兆円)の増収となり、これで、たとえば学校に行けない2億6200万人の子供が教育を受けられ、医療サービスで330万人の命が救われるのだという。

私は先に、「初夢-限りなく明るい日本」で、こんなことを書いた。『消費税アップだけでなく、年収1億円超の高額所得者への大幅所得課税と企業住民税・事業税の倍増を実現した。これで「所得格差」に対する一般国民の不満が大いに解消された。おかげでプライマリーバランス(財政の基礎的収支)が大幅に改善し、1千兆円近くあった国の借金が大幅減少に向かった』と。

上記の国際NGOと同じ主張で、富裕層への資産課税の重要性をはっきり指摘したのは、4年前に大ブームとなったトマ・ピケティである。その著書「21世の資本」は、資本主義をこのまま放っておくと貧富の格差が際限もなく広がって行くので、富める者から税金で取り立てて格差の是正を図るべきだと言い、それには資産や所得隠しの海外流出を許さない国際的な協調体制が必要だと指摘した。

ピケティ理論を補強するように3年前には「パナマ文書」が発表された。これはジャーナリスト集団による、パナマをはじめとするタックスヘイブン(課税回避地)を利用した税金逃れの実体告発である。日本の“疑惑”企業や資産家の脱税・カネ隠しの疑惑事例も出るには出たが、脱税と決めつけられなかったり、指摘するほどでもないケチな金額だったりで不燃焼のままウヤムヤになった。しかし実際は、日本から海外への資金逃避は年間60兆円超であり、国家予算にも迫りかねないという指摘も出た。そのアナを一般国民の消費税で埋めるというのでは情けない。

ピケティは、“富裕層”と“貧困層”の激突が生じると言った。すでに世界各地で国民の不満が爆発しつつある。「21世紀の資本」は、資本の横暴をこのまま放置すれば、戦争勃発のトリガーになるという警告の書でもあるのではないか。(2019・2・12 山崎義雄)