ババン時評 忖度+やっつけ+ご都合調査

 

安倍政権下で忖度(そんたく)が大流行りとなったが、本来はもっとも公正であるべき調査統計まで“忖度菌”に汚染され、さらには“やっつけ仕事”の調査や、自分たちに都合よく作る“ご都合調査”まで、嘆かわしい“汚染調査”が増えてきた。

いま国会論戦の的になっている厚労省の賃金統計も、次々に新事実が出てくる。今度は、基本の基本である調査方法を、調査員による直接調査から勝手に郵送調査に替えていたことや、調査の面倒な“水商売”を調査対象から外していたことなどがバレた。注目されるのは、この不正統計問題を検証した総務省が、不正の原因は厚労省内の「遵法(じゅんぽう)意識の欠如」と「事なかれ主義の蔓延」だと結論付けたことだ。

しかし、順法精神の欠如は指摘どおりだろうが、「事なかれ主義」とはどういうことか、にわかには理解しがたい指摘だ。この総務省の検証は、厚労省の調査担当者延べ20人を対象に聞き取りしたもの。それによると、賃金統計の調査方法変更について、担当者が重要なことと思っていなかった。現在の幹部レベルにもこれが不正だという認識が薄かった。関係者間のコミュニケーションが不足していた。などと指摘しているが、これを「事なかれ主義」と呼ぶのはどこか違和感がある。それよりも「やっつけ仕事」とでも言った方が分かりやすいのではないか。総務省の聞き取り対象「延べ20人」というのも「やっつけ仕事」ではないか。皮肉にも総務省厚労省の間にこそ「事なかれ主義」のにおいがある。

このほど明らかになった文化庁による自民党への「説明資料」もそんな例であろう。報道によると、著作権法改正案を審議する自民党に出した文化庁の審議会報告では、自民党の意向を後押しし、自分たちの法案成立への期待も込めて、賛成意見を水増しし、慎重意見を省略して報告したという。おかしなポイントの最たるものは、「積極的な意見」7つのうち、「学者」の意見とされた4つは、一人の発言を4つに分割したものだったという。文化庁の説明は「1人の説明にたくさんのポイントがあったということだ」とする。呆れて開いた口がふさがらないとはこのことだ。

中央官庁の仕事ぶりが“忖度”から“やっつけ”“ご都合主義”に変化した底流にはモラルの低下があるが、それには低俗な政治の動きに振り回される官僚の無力感やプライドの喪失が作用しているのかも。汚染菌をまき散らす安倍自民党政権の猛省が待たれる。(2019・3・8 山崎義雄)