ババン時評 おめでた解釈“令和”時代

 

元号「令和」の令の筆順は、最後の字画がタテ棒で示されたが「、」もある。(その文字がパソコンでうまく出ないのでややこしい説明になるが、その二文字は同じ意味で“同格”である)。菅官房長官の示した筆文字「令和」のタテ棒の終わりがわずかに左にハネており、「和」のノギ扁のタテ棒の先もわずかに左にハネていた。まったく細かなことが気になるのである。

ともあれ新元号発表と同時に喜びの声が巷にあふれたが、ケチをつけそうな人はケチをつけた。「首相がぺらぺら、慎むべきだ」と辻元清美衆院議員がぺらぺら喋ったと報じられた。鳩山由紀夫元首相はツイッターで、「政府もメディアもはしゃぎすぎ」「天皇の政治利用ではないか」と批判した。元首相が国の慶事に水を差すのはどうかと思う。

しかし安倍首相には新元号の決定を“国書”萬葉集に“誘導”したという手柄顔がありありだ。菅官房長官を“露払い”にして、持ち前の弁舌と高揚感で紙も見ないで「令和」を称揚した。“出しゃばりの解説もつく新元号”(朝日川柳)は少々きつすぎるかもしれないが、安倍首相の長広舌に違和感を覚えた国民も少なくないのかもしれない。

“日本中辞書を引いてる「令」の意味”(よみうり時事川柳)は素直な一句だが、私もその一人だ。日本語大辞典によれば、令とは、①いいつけ。おきて。のり。「訓令・指令・辞令・法令・命令」「令状」(略)。②上に付けて敬意を示す。「令嬢・令息」。③よい。「令聞・令名」。④おさ。長官。「県令」。⑤しむ。せしむ。させる。とある。有り体に言えば「令」は上から目線で固くて窮屈でしゃちこばっている。あえて言えば“国家臭”が強い。安倍首相は③の「よい」意味を強調したいようだが、それは“付け足し”ていどの意味だ。

固い話になるが、付け足していどの「よい」意味で「令和」を語る“おめでた解釈”より、辞書が示すような「令」の持つ冷徹な意味も肯定するのはどうだろうか。“国書に”こだわって制定した「令和」なら少し前向きの日本的な解釈を考えてみる。例えば大和時代律令制から、戦前までの立憲君主制を経て、戦後の立憲民主制の国となった今の日本を考え、現代における法治国家の理念を「令」と考え、民主制の理念を「和」と考えて、「令」と「和」の均衡を図らなければならない―などという理解も成り立つのではないか。(2019・4・4 山崎義雄の「中高年ババンG」に拡大版あり)