ババン時評 玉虫色の韓国勝訴に疑義

 

こんなアホらしい判定があろうか。世界貿易機関WTO)が、日本の海産物に輸入制限をかける韓国に対して、第二審で逆転勝訴の判定を出した。理由は、どうやら日本の言い分が間違っていたというより、第一審で韓国の言い分を十分に聞かなかったから、ということらしい。

すなわち、先の第一審は、「(日本は)現実の数値のみならず、土壌など周辺環境も含め将来にわたって改善すべきだ」との韓国の主張を組み込まずに結論づけた。したがって第一審の判断は「法律の適用上欠陥があるので、(第一審の判決を)取り消す」としたのが第二審の判断だ。要するに、日本食品の安全性は否定せず将来の安全性に向かってさらに改善すべきだから第一審判決を取り消すというのだ。この理屈がいまひとつ分からない。ここから韓国による現下の輸入制限が妥当だという結論を導き出すのはムリだろう。

そこでわが国は、菅義偉官房長官が、「第二審でも、日本産食品は科学的に安全であり、韓国の安全基準を満たしているとの第一審の認定を維持している」として、「わが国が敗訴したとの指摘は当たらない」と発表した。韓国側はこうした日本の態度を、「強弁」「我田引水」「無礼な態度」などと非難した。(後日、「日本食品は科学的に安全」との文言は第一審文書に記載されていないことが判明したが、わが国産品は国際機関より厳しい基準で出荷されていると当局は弁明)

WTOの紛争処理手続きでは「第一審」は紛争処理小委員会(パネル)が担当、「第二審」は上級委員会が担当する。しかし、WTOの紛争処理の実態はお寒い限りだ。新聞は報じないが、ウイキペディアによると、紛争解決機関上級委員は、定員が7名で、2019年4月1日現在3名しか在籍していないという。これは米国が再任や指名を拒んできたためで、実際の審理は3名(インド、米国、中国)で行っている。そのうえ、3名のうち、法的な理由で審理への関与を控えなければならない委員が1人でも出た場合は、制度が崩壊する懸念があり、2019年12月には2名が欠員となって審議が不可能になる状況だという。

これが事実だとすれば、WTOの紛争処理機構は空恐ろしい虚構機関である。河野外相がWTOの紛争処理の改革を訴える意味もここにあろう。ともあれ今回の“事件”でも日本に負けたくない韓国に、日本人が嫌な気分にさせられる構図が繰り返された。(2019・4・17 山崎義雄)