ババン時評 外人労働力の裏表

 

いよいよこの4月から外国人労働力の受け入れが始まった。令和時代も続く日本経済の課題は、人口減と労働力不足、そして財政赤字だが、とりわけ少子高齢化による人口減と労働力不足が深刻だ。そのアナを埋めようというのが外国人労働力の受け入れだ。しかし、個別の分野で何万人足りないから何万人受け入れようという数合わせの計算だけで考えるのは問題だ。

昨年の国会で安倍首相は、移入労働力について、あくまで「労働力」を受け入れるのであり、「一定規模の外国人と家族を、期限を設けることなく受け入れて国家を維持しようという移民政策は採らない」とした。しかし「労働力」だけを受け入れることは不可能だ。現実には、「労働力」を持った「人間」を招じ入れるのだから、かぎりなく移民受け入れに近くなる。具体的には、外国人労働者を受け入れるための職場環境や、日本語教育、住宅問題、いずれは社会保障などの課題も出てくる。

そんなことを思わせるのが、東電の福島原発廃炉の作業に「特定技能外国人」を受け入れることを決めたというニュースだ(朝日4・18)。受け入れる外国人技能者は、人手不足の深刻な介護や建設など14業種だが、資格には1号と2号があり、2号は「熟練した技能」を持つ者だ。2号技能者は1号で許されない家族帯同が許され、在留期間も1号の5年に比べて期間延長が許される。

東電は、その2号にあたる特定技能をもつ外国人労働者を、廃炉作業の続く福島第一原発などの現場作業のうち、「建設」を中心に数種の関連業種関連作業について受け入れることを決めたという。この対象技能者を雇用・派遣するゼネコンなど数十社を集めた会議で説明したと報じられる。3.11以前の、これまでの日本人の原発作業者についても被爆懸念などあまり世に知られない歴史がある。すでに今回の福島廃炉作業への外国人労働者についても、放射線教育や意思の疎通の不足による不慮の事故などが懸念されているという。

外国人労働力の受け入れに反対だというわけではないが、受け入れれば、日本人労働者のトラブル以上にややこしい国際問題になる恐れがある。場合によっては韓国との徴用工問題の“変形”ともなりかねない。「労働力」の受け入れなどと安易に考えずに、「外人労働力」の扱いは「日本人労働力」以上に難しい問題だと認識すべきではないか。(2019・4・21 山崎義雄)