ババン時評 勝てないまでも負けない軍備

 

安倍首相とトランプ米大統領が5月28日、横須賀基地護衛艦「かが」に搭乗して、自衛隊員500人に訓示・激励を与えた。ご両人ともご機嫌だったようだ。かがは空母への改修が予定されている。それが「攻撃型空母」に当たるとすれば、自衛隊専守防衛原則を破ることになる。そのあたりが与野党の論点になる。

かがに搭載されるのは、最新鋭ステルス戦闘機F35Bであり、同機はまず42機が導入され、さらに105機の追加が計画されている。この大量購入を「同盟国で最も多い」と、かが艦上で?トランプ大統領は歓迎したと言う。この最新鋭戦闘機を搭載した空母かがは、いずれ米軍と共にインド太平洋全域に派遣されるであろう。これを専守防衛のための出動と見做すかどうか、これも国会論戦における大きな争点となろう。

さらに、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の国内数カ所への配備計画も着々と進んでいる。住民の不安も大きい。先ごろ起きた同機の墜落事故の原因も究明されていない。今回のトランプ大統領来日では、安倍首相による日米同盟重視の歓待パフォーマンスが繰り広げられただけで、沖縄基地問題や地域住民の不安などに触れることはなかったようだ。

とはいえ、ますますきな臭さを増す国際状況の中で、平和憲法を掲げるだけの丸腰で通用すると考えるほどお人よしの日本人はそう多くはない。国連をはじめとして、国際紛争を処理するための、国際社会に通用する軍事力も警察権も裁判権も存在しない。したがって一国が無防備の丸腰で侵略国の侵攻を防ぐのは不可能だ。だから独立国は自ら身を守るための力を持たなければならない。

要するに、自衛のための戦力を保持するのは主権国家の権利だ。それが自衛権だ。主権を持つ独立国家が、主権を脅かす他国の侵害を防ぐために自衛力を発揮するのは当たり前だ。したがってわが国憲法の平和主義も、わが国からしかける侵略戦争を否定するものであり、無条件の平和主義ではない。戦力の不保持も、侵略のための戦力は持たないと解すべきだ。

結局は、他国にあなどられない程度の戦力、勝てないまでも負けない軍備と戦力を保持し、それを適切にシビリアンコントロールできるシステムを確立しなければならない。それが私の「戦争反対・軍備賛成」の持論である。(2019・5・29 山崎義雄)