ババン時評 問題議員の“子づくり論議”

つまらない失言で大臣の職を失った桜田義孝前五輪相が、またまたお騒がせの失言で脚光を?浴びている。私は、いくら失言を責められても懲りない桜田前五輪相を“桜田こりん相”と呼んで先にエッセイを書いた。今回の発言、「子どもは最低3人ぐらいは生むように」、とは驚いた。たしかに同じような考え方の人はいる。案外、同意見の人が少なくないのかもしれない。

昨年は、杉田水脈(みお)衆議院議員が、同性婚は「子供をつくらないから生産性がない。そこに税金を使うのはどうか」という論文?を雑誌に発表して大いに物議をかもした。桜田議員も生産性の視点に立って「子供3人説」を取っているのかもしれない。夫婦2人がかりで子供2人つくったのではプラマイ ゼロであり、3人つくってやっと生産性が向上するというわけだ。

今年に入っては、麻生太郎副総理が、「子供を生まない方が問題だ」と発言してマスコミに叩かれ、発言を撤回して謝罪した。しかしこの発言は、いずれ高齢者1人を2人の現役世代が支えなければならなくなる高齢化問題に関する発言であり、この人一流の「フライング」だ。この人には、「90にもなっていつまで生きてるつもりだよ」とか、「不摂生な人の医療費負担はアホらしい」など、歯に衣着せぬ?失言が多い。内心、快哉を叫ぶフアンも少なくないようだ。

しかし、何を言うにしても、一般人が言うのと国会議員が言うのとでは違う。一般人が言う分には「意見の違い」で許されることも、国会議員としては許されない発言がある。大げさに言えば、国会議員というのは、個人の尊厳を謳う憲法という最高の法人格にかしづく下僕だ。桜田代議士の場合はHPで、「凡庸な価値観のみが蔓延し、個人がその人格性を十分に発揮できない窮屈な社会」はダメだと言っている。「子供3人説」が「非凡な価値観」であり、「個人の人格性」を傷つけるものではない―、とは思えない。桜田議員は、自ら掲げる政治理念を忘れてしまったか。

これは“子づくり論議”に限らないが、奇妙なことに、この手の失言?を繰り返すのは自民党の代議士である。こうした失言を擁護するのも派閥に属する仲間を中心とする自民党議員だ。派閥の功罪にはいろいろあろうが、「功」の方では、派内の切磋琢磨で政治や理念を学ぶことが第一で、何ごとにつけ議論をし、知見を広めて人材が育っていくことだろう。今その派閥の気概が薄れてきているのではないか。派閥のボスやリーダーの人材育成能力や影響力も低下しているのかもしれない。何よりも、問題を起こす議員諸氏の自覚のなさと不勉強ぶりが情けない。(2019・6・3 山崎義雄)