ババン時評 消費増税はダメ?そのワケ!

 

安倍首相は、息の長い景気回復を“自讃”してきたが、大方の国民は一向に景気回復の実感をもてず財布のヒモを締めている。事実、頼みの個人消費が低迷したままで、参院選を目前に景気の失速が危ぶまれている。そんな状況下で秋の消費増税を巡る論議がいよいよ熱を帯びてきた。

消費増税に対する賛否の論点は、「景気重視」か「財政重視」かだ。具体的には、目下の不確かな景気の状況下で消費増税を行えば間違いなく景気は失速する。それでいいのかというのが「景気重視派」の主張だ。一方、「財政重視派」の主張は、これ以上の財政悪化は、国の借金のツケを孫子の代に回すことになる。それでいいのかということになる。さてどちらの主張が正しいのか。国民の1人ひとりが判断を迫られることになる。

しかし、ここで重要なのは、判断のポイントは「景気」か「財政」かという単純な二者択一の問題ではないということだ。ここを勘違いすると、選択に苦しむことになる。景気悪化を招く政治を良しとする国民は1人もいない。同時に、財政赤字のツケを子や孫の世代に回す政治を良しとする国民もまた1人もいない。要するに「景気」と「財政」は並列・拮抗する選択肢ではない。

現在の国の借金は1100兆円、国民一人当たり885万円である。今度の8パーセントから10%への消費増税における、2%アップ分の税収増は、6.8兆円。そこから、将来世代の負担軽減(赤字国債の発行減)に使う分は2.8兆円。借金減らしには焼け石に水だ。

前回14年度の5%から8%への消費増税では、実質GDPはマイナス成長に転落した。今回の10%への消費増税も、実施すればマイナス成長に陥る公算が大である。さらに、前回の消費増税では、落ち込んだ景気回復のために、増税後に企業減税財政出動でテコ入れを余儀なくされた。ばかばかしい出費ではないか。

そもそも、財政改革は、景気対策のような目先の対策で解決できる課題ではない。また財政改革は、財務省好みの増税ではなく経済成長による歳入増で狙うべきだ。令和の新時代における政治は、国民の生活不安を取り除くこと、国民に心のゆとりを取り戻してもらうことだろう。そうなれば国民の財布のヒモも緩む。ここは消費増税を再び見送って、少なくともさらに数年の間、景気の先行きを注視する必要があるのではないか。(2019/6・7 山崎義雄)