ババン時評 国民の前に議員が憲法を学べ

 

安倍首相の熱い思いを受けていよいよ自民党憲法改正に向けて動き出そうとしているようだ。この、雲行き次第では票を失いかねない危ない憲法問題を、自民党はあえて夏の参院選の争点にする構えだ。自民党は、議員の理解を深めるため、憲法改正の重要項目について、派閥ごとに勉強会を開いているという。付け焼刃的ではあるが、やらないよりはましだろう。

おもしろいのは、自民党が、有権者向けに憲法改正の要点を解説する漫画本を作成するという。自民党憲法改正の重要条文案4項目は、①自衛隊の根拠規定の明記、②緊急事態対応、③参院選の合区解消、④教育充実だ。このあたりを分かりやすく説明するのがその漫画本で、40ページの小冊子を20万部印刷してばらまくという。読者対象は若い世代だが、実際はまず参院選候補者や国会議員先生がこれで勉強することになるのだろう。

漫画本を見なければ正確な説明内容は分からないが、説明しようとする内容でダントツ重要なのは、①自衛隊の根拠規定の明記である。安倍首相の持論からすればそれは、「戦争はしない」「戦力は持たない」とする現行9条はそのままにして、それに自衛隊の存在を認める条文を付け加える加憲である。しかしそれは、憲法制定以来の“病根”(すなわち「戦力不保持」)がそのまま残り、これからも自衛隊違憲論がくすぶり続けることになる。それを議員諸氏は有権者にどう説明できるのか。

次いで重要なのは、②緊急事態対応だ。緊急事態対応とは、わかりやすく言えば、米国軍(同盟国)が攻撃された場合に自衛隊(日本)が参戦することである。緊急事態対応の根拠が「集団的自衛権」だ。集団的自衛権自衛権の“拡大解釈”であり憲法違反だと騒がれながらも4年前の安保関連法成立で認められることになった。しかし現実の国際紛争下で、現実の戦場でどこまで日本軍の参戦が許されるかは、論議の絶えないところだ。それを有権者にどう説明できるのか。

要するに憲法改正は、自民党議員も参院選立候補の新人も、なまなかなにわか勉強では間に合わないはずの難問だ。それを安倍政権は、参院選後の秋ごろから国民的に憲法改正論議を盛り上げ、来年1月の通常国会憲法改正発議を行い、来年のうちに国民投票に持っていく腹積もりらしい。議員の理解もおぼつかないままに国民に改憲条文に対する賛否の判断を迫るというのは如何なものか。安倍首相の強権的な行動力に不安を覚える国民もいるのではないか。(2019・6・20 山崎義雄のHP「中高年ばばんG」に同テーマの拡大版あり)