ババン時評 “韓国のトリセツ”はあるか

 

隣の国がよく分からないというのは情けない。日本からすれば、韓国が失効期限ぎりぎりで「Gソミア」の終了を撤回した決断は当然だ。しかしその前提として、日本が対韓輸出制限を緩める方向で、韓国との協議の再開を約束をしたとかしないとかゴネだす。これが分からない。

日韓が分かり合えない根本原因は、歴史認識の違いに尽きる。彼我の歴史認識のズレを冷静に見ても、韓国側には最初から反日民族主義的で特殊な歴史観があり、日本には朝鮮統治の反省と同時に韓国の近代化に寄与したという自負がある。

誤解を恐れずに言えば、日本には欧米の新知識を取り込んで、欧米の植民地にもならずに、東洋で最初に近代化した優越感があり、韓国には中国の属国として生きてきた歴史の上に日本の支配を受けた屈辱感、劣等意識がある。そして双方に“引け目”がある。

「文藝春秋」12月号に、韓国内では非難される良識派歴史学者による座談会記事「反日種族主義を追放せよ」がある。そこでは例えば先の大戦で日本が募った韓国人の陸軍特別志願兵の話がある。韓国では、その志願兵は日本による「強制動員」であり「被害者」であるとともに「反民族行為者」だと非難される。ところが事実は自由意思による応召で、1万6,500人の募集に約80万人、およそ50倍の応募があったという。

韓国左派は、こうした都合の悪い歴史事実には目を向けず、強引に筋書きを歪曲する。その“得意手”で、日韓基本条約は無効だとか、徴用工補償は基本条約で縛られないとか、韓国大法院の判決が重要だなどと、国際常識から言っても通用しない主張を繰り返す。

しかしこの韓国を理屈で説得することはムリだろう。歴史認識の誤りを認めさせることも不可能だろう。要するにこの韓国に対処する有効な“韓国トリセツ”はない。といってこれまで通り日本が低姿勢を続ければ今後も舐められるだけだろう。

今回、Gソミア問題で日本が一貫して毅然とした態度を取ったことは、少なからず韓国を慌てさせた。今後も日本は、こうした是々非々の外交姿勢を(世界の耳目を集めながら)取り続けるべきだろう。その上で文春座談会のような“大人”の発言を待って、韓国側の自浄作用による歴史認識の修正を気長に待つしかなさそうだ。(2019・12・2 山崎義雄)