ババン時評 読み書き嫌いな子が増えた

これは、子供ばかりとは言えないのだが、今、日本の子供たちの国語力の低下が問題になっている。近年とみに文章を読めない書けない子供たちが増えているという。読む力が落ちるということは、文章の意味を理解するだけでなく、人の話を理解する能力も低下することになるのは明らかだ。

経済協力開発機構OECD)の国際的な学力調査によると、世界各国の15歳の学力を比較したところ、日本の子どもは科学と数学はトップレベルを維持しているものの、問題の読解力では、前回(2015年)もダウンしたが、今回はさらに落ち込んで15位になったという。

「今の学校は英語や道徳など新たな課題が山積し、読解力の育成が難しくなっている」と指摘する専門家の声もあるというが、そればかりではないだろう。むしろ問題はSNSの普及、スマホの普及ではないか。乏しい単語のやり取りや絵文字やイラストで友達とのコミュニケーションは済むのだから、長文を苦手になるのも当たり前だ。

しかしこれは今に始まった現象ではない。子供世界がこうなる前に、すでに若者から中高年世代までその傾向を強めてきていたのではないか。引き合いに出すにも程度が低すぎるが、先ごろ、安倍首相の北海道での選挙演説に、「安倍やめろ」とヤジを連呼して警官に阻止された男が、言論の自由を侵害されたとかで告訴すると騒いだ。

男は団体職員だというからいちおう常識的な大人のはずだが、そうでないところが困りものである。「安倍やめろ」が「言論」だと思い込んでいるバカさ加減は、さすがに世の笑いものになった。対比するのも失礼だが、「言論の自由」を侵害されたと主張できるのは「ヤジ男」ではなく安倍首相の方であろう。

このほど論文形式による国語などの全国共通テストが中止になり、次いで記述形式の大学入試テストが見送りとなった。理由は、評価が不公平になり易いことだ。しかしそんな理由で論文・記述式を否定するのは不可解だ。読み書きを嫌う子供たちを増やさないためにも、全国共通テストなどができないなら、学校単位の特色のある論文テストを普及させるなど工夫すべきではないか。(2019・12・15 山崎義雄)