ババン時評 「客引き国家」ニッポン?

 

カジノという“賭博場”の開帳を巡ってこんな事件が起こることは十分に予想された。カジノを中心とするリゾート施設(IR)の事業を推進する中心人物の1人、元内閣府副大臣の秋元司衆議院議員収賄容疑で逮捕された。数年後の開業を目指す政府のIR事業に影響が出るだろう。

政府がカジノ法案を閣議決定したのは2018年だ。当時は、公明党カジノ法案に賛否両論があり、日本維新の会は導入に前向きだったが、立憲民主党共産党などほとんどの野党は、ギャンブル依存症が増えるとか、マネーロンダリングすなわち不正な金の“資金洗浄”に使われるとか、暴力団の介入を招くなど予想される悪影響を挙げてカジノ法案に反対していた。

しかし、それ以前の2010年に発足している「国際観光産業振興議員連盟」、通称“カジノ議連”には、社民党共産党を除く200名を超える超党派国会議員が参加していた。カジノ法の目的は観光産業の振興と、今は許されていないパチンコ景品の換金の合法化だった。こんな怪しげな事業に多くの議員先生たちが熱くなったのはいまだに解せない。

カジノ法案が閣議決定された2018年当時、テレビで、20年近く前にカジノ賭博で名を上げた?大王製紙元会長の井川意高氏が賭博にハマった経緯を語っていた。最初は家族旅行の折りにカジノに立ち寄って、100万円掛けたら2千万円になったのが始まりで、たちまち掛け金はウン千万円から億の単位になり、バレた時には100億円超をつぎ込んでいた。

ギャンブル依存症対策では、安倍首相も公明党や野党に気を使って、日本人の入場回数や掛金の制限などを検討しているというが、先の井川氏は、日本でカジノが開設されれば賭博マニアが増え、日本でやりにくくなれば、自分と同じようにたちまちシンガポールマカオに出向くだろうと言う。“専門家”の予想だから“当たり”だろう。

カジノ賭博は外国人観光客を呼び込もうという作戦だが、巨大な外資が“胴元”になり、多くの日本人が“カモ”になる。カジノ賭博の“開帳”で、これ以上節操のない“客引き国家”ニッポンに堕落することだけはごめん被りたい。今からでも遅くない。とりわけカジノ誘致に名乗りを上げている都市は真剣に考慮すべきではないか。(2020・1・6 山崎義雄)