ババン時評 中国“盗用”技術の転用先

中国の技術盗用に対する世界の警戒が強まっている。米国は、情報流出を防ぐために中国「ファーウェイ」の締め出しを決めたが、これに続き英国が2027年までにファーウェイ機器を排除するとし、フランスも28年までにファーウェイの全製品を排除するという。米国は、中国の動画共有ソフト「TikTok」(ティックトック)の使用禁止も検討しているらしい。

以下は、先に発表した「“盗用”軍事技術の中国」で積み残したメモ内容などを紹介するいわば続編であり、内容のほとんどは前回同様に、ピーター・ナヴァロ著 赤根洋子訳『米中もし戦わば 戦争の地政学』(文芸春秋)からの引用である。

中国ミサイル艦はオーストラリアの設計図を元に建造した。フランス製ディーゼルエンジン搭載の軍艦から発射するミサイルはロシア製である。さらに、ボーイングキャタピラー、GE、ゼネラルモーターなど、中国に生産拠点を移している米国企業の「軍民両用」技術が中国軍に転用されている。

中国の近代兵器はすべて、サイバースパイ作戦と外国製兵器のリバースエンジニアリングで米露及び欧州先進国から“盗み出し”た軍事技術によって開発・製造されたものである。中国の領空を防衛しているのは世界最強のロシア製防空システムである。他にオーストラリア、フランス、ドイツなどの技術で最新の潜水艦、ヘリコプター、ミサイル艦を製造している。

サイバースパイ行為の結果、中国は米国のアジアの航空支配の要である第5世代戦闘機と同等の戦闘機を手に入れ、大量のドローンを生産し、イージス戦闘管理システムを盗み出した。さらに中国は、冷戦時代スタイルの従来型のスパイ行為で、弾道ミサイル巡航ミサイルの技術を盗み出し、大量生産されたそれらのミサイルは、米艦船、前進基地、諸都市、当然日本にも向けられている。

現在のサイバー部隊の規模は、中国の3万人が断トツだ。次いで北朝鮮が6800人、米国が6200人、ロシア1000人、これに比べて日本は220人、まもなく290人に増員するというが、お寒い限りである。米国との連携でサイバー機能、情報収集機能の強化を急ぐ必要があろう。(2020・8・3 山崎義雄)