ババン時評 半沢直樹の教訓は「自助」

人気を博したテレビドラマ「半沢直樹」の主人公・半沢(堺直人)は、“青臭い”くらいに真直ぐな主張を押し通す熱血漢。経営危機に陥った「帝国航空」の再建計画に携わる「東京中央銀行」チームを率いて、ムリと思われた自立再建計画を推し進める。これに対して国が介入し、銀行筋の大幅な債権放棄による再建計画を打ち出す。半沢らは債権放棄を拒否して国による帝国航空再建計画に真っ向から立ち向う。

国の計画は、帝國航空に出資する銀行団の大幅債権放棄で帝国航空の財政立て直しを図ろうというもの。国の「再建タスクホース」を率いるのは権柄づくの白井亜希子国交相江口のりこ)。白井を陰で操る政界のドンで航空利権を狙う極めつけの悪相・箕部啓治(柄本明)。金融庁役人でお姉言葉、男の股間をつかむ特技を持つ黒崎(片岡愛之助)らが競演。

内部には最終回まで半沢潰しを演じる重役で目玉演技の大和田(香川照之)など多士済々の敵味方。キャラの立つ面々が帝國航空の再建を巡る国と銀行の対立の中で、それぞれの思惑を秘めて最後のどんでん返しまでスリリングな人間模様を展開する。

現実の社会ではたまたま今、新型コロナウイルスの蔓延による乗客激減で世界の航空会社が経営危機に見舞われている。日本も同様で、ANAホールディングスなど航空業界が資金繰りで大ピンチに陥っており、政府への支援要請などを求めて動き始めたという。

すでに政府は4月の時点で、麻生副総理兼財務大臣が、利用者減による航空機の大幅な運休でピンチに陥っている航空会社を対象に、日本政策投資銀行などを通じて、上限を設けない「危機対応融資」という特別な融資制度で支援していく考えを明らかにしている。

この支援策は、コロナ下における経済対策の一環として盛り込む方針だというが、問題は、日本政策投資銀行から航空業界への大型融資に政府が保証を与えるという点だ。政府の保証で大型融資を支援してもらいたいのは航空業界だけではない。

ドラマ半沢直樹では、帝國航空のメインバンクで政府系の「開発投資銀行」をはじめ半沢の「東京中央銀行」など銀行団が、政府に大幅の債権放棄を迫られて抵抗する。「開発投資銀行」の担当女史まで涙をこぼして抵抗の意思を示す。やはり企業再建においても菅総理の言う「自助、共助、公助」で、まずは自助からいかなければならないのではないでしょうか。(2020・10・5 山崎義雄)