ババン時評 “岩盤国家”韓国の異常性

韓国人識者による、日本統治時代の功罪に対するまともな評価本も結構あるが、今売れている『反日種族主義の闘争』は勇気ある6名の韓国人学者によるきわめて学術的な一書だ。本書は前著『反日種族主義』の続編である。編著者の李栄薫(イヨンフン)ソウル大元教授はこう語っている。

「韓国人の自己認識に日本のいわゆる“良識的知識人”が及ぼした影響は小さくない。日本軍慰安婦性奴隷説は、もともと日本で作られたものだ。戦時期の朝鮮人労働者強制連行説(強制徴用)も同様である。しかし日本の“良心的知識人”は「反日種族主義」に沈黙したままだ―」。

そして氏は、日本軍慰安婦の存在を認めながらも「性奴隷説」を否定する。戦後の占領米軍やアジアなどへの慰安婦提供の実態を数字を挙げて克明に立証する。また、朝鮮人労働者徴用についても正当な雇用と保証があったとして「強制連行」や「強制徴用」説を否定し、韓国大法院による2018年の新日鉄住金に対する賠償命令判決は不当で韓国のハジだとする。

いうまでもなく、1965年に日韓国交正常化が行われ、「日韓請求権協定」で個人請求権が放棄されたことは歴史的真実である。そして、いったんは日韓間で「不可逆的」に解決を見た問題である。それにもかかわらず慰安婦の「性奴隷」説、徴用工の「強制徴用」説、国際法上も認められない「個人請求権」を蒸し返す異常性に、韓国政治家や国民は本当に気づかないのだろうか。

産経新聞(9・18)が李氏のインタビュー記事を大きく取り上げているが、そこで李氏は、「韓国では少数派だが李氏らの研究を評価し、自国の反日感情を冷静に見直すといった反応が確実に出ている。ただ、個人的に評価しても公の場では反日への批判に消極的だ」と語り、反日批判を言えぬこの現状を「韓国の限界」だと評した。もちろん李氏らはその「限界」の突破に挑んでいるわけだ。

私「ババン時評」は先に「韓国のトリセツはあるか」で、韓国には中国の属国として生きてきた歴史の上に日本の統治に服した屈辱感、劣等意識があるとして、これには打つ手なし、韓国のトリセツはないとした。その上で韓国知識人など「“大人”の発言を待って、韓国側の自浄作用による歴史認識の修正を気長に待つしかなさそうだ」とも書いた。韓国の精神的“岩盤”を破砕するためには、やはり李氏らのような勇気ある韓国知識人による歴史の検証・修正で岩盤に鉄槌を加え、それによって政治家や国民が徐々に覚醒していくことを待つしかないのではないか。(2020・10・8  山崎義雄)