ババン時評 なぞなぞ「核兵器禁止条約」

核兵器禁止は可能か〉 核兵器禁止条約は批准に必要な50カ国・地域の要件を満たして来年1月に発効する。しかしこれを100カ国、100数十カ国へと拡大していくことは容易ではないだろう。核保有を望む国も少なくない。日本においてすら核開発の論議がある。

核兵器は有用か無用か〉 核兵器は人類に最も悲惨な結果をもたらす兵器である。しかし現実の世界では核の均衡が世界平和を保っている。条約を批准した50カ国は核の脅威にさらされていない国がほとんどで、核の脅威にさらされている日本とは条件が違いすぎる。

核兵器禁止条約は現実的か〉 肝心の核保有国、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスがこの条約に反対している。これらの核保有国は、すでにある軍縮交渉のNPT=核拡散防止条約のもとに、核兵器を段階的に削減していくことが現実的だとしている。

〈条約は賛成国と反対国の対立を生むか〉 核保有国は、今回の核兵器禁止条約は、これに加わらない核保有国と、条約の批准・成立に加わった核を持たない50カ国との溝を深くすると言う。そうした状況下で、日本は日米安保に配慮して条約批准に参加していない。

〈条約参加国の増加を抑えるべきか〉 米国とロシアは、核戦力の必要な世界の安全保障情勢の下でいきなり核兵器禁止を実現することはできないとして反対。すでに条約の批准に参加した国やこれから参加しようと考えている国は考え直すようにと呼びかけている。

〈核保有国自身の見直しはあるか〉 条約への参加国が増えていけば強い国際世論になろう。無制限の核兵器開発に対する核保有国自身の見直し機運もある。来年2月に失効する米露の新戦略兵器削減条約(新START)は、延長に向けて歩み寄りの動きが出ている。

〈身勝手な中国が条約推進のガンか〉 中国は、核兵器の禁止と廃絶は中国の主張するところだと言いながら、「各国の安全を損なってはならない」として核兵器開発を進める。そして最大の核保有国・米国が大幅に核兵器を削減しないかぎり、核軍縮には応じないと言う。

〈日本は一役買うべきではないか〉 米国の“核の傘”を必要とする日本が直ちに核兵器禁止条約に参加するのはむずかしいが、唯一の被爆国として一歩踏み出し、条約推進に一定の役割を果たす道を模索すべきではないか。(2020・11・2 山崎義雄)