ババン時評 もう逃げられない立憲民主

日本の憲法ほど“無傷で長持ち”している憲法は世界に類を見ない。今年で日本国憲法は公布から74年目を迎えた。安倍前首相の悲願だった憲法改正論議が進まず、菅首相自民党と再編後の立憲民主党による仕切り直しがはじまる。読売新聞(11・4)が、「公布74年の憲法論議」として、両党の改憲責任者へのインタビュー記事を載せている。

まず、自民党憲法改正推進本部長衛藤征志郎氏が、自民党の条文イメージ4項目は、①自衛隊の根拠規定の明記、②緊急事態条項の創設、③参院選の合区解消、④教育の充実だと語り、その上で、自民党の改正原案がそのまま国会に提出されるというのは誤解だとして、公明党はもとより野党のドアもノックし、互いの意見をすり合わせると、柔軟な対応姿勢を示している。

さらに、憲法審査会で国民投票法改正案の成立を最優先するのは当然で、CM規制のあり方を議論することも賛成。まず今の臨時国会国民投票環境の向上などの改正案を成立させ、CM規制はその後で扱えばいいとして、立民党に気を遣いながらも、CM規制の順位づけを”提言する。しかし最後でいいとするCM規制を、野党はこれまで論点の中心において騒いできた。

この自民党に対して一方の、立憲民主党憲法調査会山花郁夫氏は、憲法論議の際は、憲法改正が必要な理由があるかどうかを考えることから始めるべきだろうと言う。そして、自民党改憲に前のめりになりすぎている。落ち着いて議論するため少しセーブしてもらえるとありがたい、とも言う。こんな具合に、憲法改正となると日ごろ攻撃的な立民党が随分と鷹揚な構え?悠長な態度になる。

「具体的には党内で議論を進めるが」と言いつつ挙げている改憲問題は、臨時国会召問題、議員任期の問題、婚姻・同性婚問題、衆院解散の問題、国民投票制度の問題、CM規制の問題などと、憲法9条を避けた上で、制度や手続き問題を中心に論点が“拡散”する。

なによりも、これから「具体的には党内で議論を進める」(今までは進めていない)という怠慢ぶりが問題だ。合流新党は旧立憲民主党と同様「護憲政党」ではないというが、国民の目には、同党は護憲に固執していると見えている。はたして同党は改憲にカジを切れるのか、改憲の“目玉”である憲法9条を巡って党内合意を形成できるのか、国民は注目している。(2020・11・11 山崎義雄)