ババン時評 中国共産軍の“欺瞞戦勝”

いつものことだが、中国の自己宣伝はあまりにも度が過ぎる。先月の「抗日戦争75周年」記念講演においても、今月の「朝鮮戦争参戦70年」の記念式典においても、中国共産党軍は大勝利したというのである。つまり先の大戦における抗日戦とその後の朝鮮戦争における対米戦で、中国共産党軍は勇ましく戦って勝利したと習近平国家主席が高らかに吹いたのだ。

抗日戦争では、「共産党は大黒柱的役割を果たした」として、共産党による中国統治の正当性を強調した。しかし本当のところは、最後まで抗日戦争を戦い抜いた主役は蒋介石中国国民党軍だ。中国共産党日中戦争終盤まで省境やへき地の農村を辿りながら徐々に力を蓄えた。

その毛沢東共産党軍が中央に進出した時、嫌がる蒋介石を説得して毛沢東中央政府に招き入れたのはトルーマン米大統領だ。いわゆる国共合作である。結果として日中戦争は中国の勝利となったが、日本とすれば中国に負けた覚えがなく米国に負けた思いが強い。そして戦後の国・共による内戦で国民党軍が敗れ、庇を貸して母屋を取られた蒋介石政府は台湾に逃れた。

また、朝鮮戦争への参戦について習主席は「抗米援朝」すなわち米国に対抗して北朝鮮を支援した戦争だとし、勢力で劣る中国軍が米軍を撃退した偉大な勝利だと強調・自賛した。だからこれからも米国による「脅しや封鎖、極端な圧力」は行き詰まりに陥るだけだと脅しをかけるのだ。たしかに中国の支援がなければ北朝鮮は敗北していただろうが、現実の朝鮮半島は今も38度線をはさんで南北分断のまま休戦中だ。「米軍を撃退した偉大な勝利」だというのは中国得意の白髪三千丈的な“大口たたき”ではないか。

そもそも朝鮮戦争は、北朝鮮による不意打ちの韓国侵攻に始まった。アメリカの支援で韓国が反撃し、逆に追い詰められた北朝鮮金正日がロシアに救援を求めて断られ、肩代わりを振られた中国の毛沢東が出兵を決意する。しかしアメリカが怖い毛沢東は中国軍の正体を隠し、中国人民志願兵として目立たないように北朝鮮に送り込んだ。これを見抜いたアメリカ軍司令官のマッカーサーは中国に侵攻しようとするが、トルーマン大統領が許さなかった。

中国の戦法は、孫子の兵法の「兵は詭道なり」のズルさを思わせる。詭道は、戦いに勝つためには何でもありの権謀術数「詭譎」(きけつ)を奨励する。今、習近平共産党の狙いは、どんな手を使ってでも台湾を手に入れることだろう。そして尖閣諸島を狙ってくる。現実には尖閣を先に取りに来るかもしれない。こうした“詭譎中国”を相手に、菅政権とバイデン新政権による日米安保がどう展開されるのだろうか。(2020・11・14 山崎義雄)