ババン時評 空虚な国会コンニャク問答

この小文は責めるも守るも低レベルの国会論戦だという不真面目な話だ。今の予算委集中審議でもまた、コロナ対策をはじめ学術会議問題、そしてサクラを見る会の話など、終わりのない堂々巡りのコンニャク問答が展開された。

コロナ対策では、当然のように野党は国の観光支援策「Go To トラベル」を攻撃。立民党の枝野代表は「人の移動が活発になれば感染拡大が広がる」として事業の中止を求めた。これに対して菅総理は、人の移動が「感染拡大の大きな原因になるというエビデンス(根拠)は存在しない」と横文字援用ではぐらかし、支援事業は「経済を支える有力な事業だ」と反論した。 

大げさに言えば「人の移動が感染を広げる」ことの“立証責任”は枝野氏にある? しかし常識的に考えれば、人の移動の増加が感染拡大につながるであろうことは容易に考えられる。さらに菅首相は、支援事業は「経済を支える有力な事業だ」すなわち経済対策の一環だとしたが、第3波のコロナ急拡大の下で経済対策と感染対策のどちらが焦眉の急かは明らかだ。

学術会議問答でも、菅首相のヘキはいかんなく発揮される。首相は「バランスの取れた活動を確保するため、適切に判断した」と答弁した。「バランスの取れた活動」の必要があるのは一義的に学術会議であり、6人の任命拒否の直接的な理由ではない。それに首相の任命は形式的なものだとする過去の政府答弁を無視している。菅首相の答弁は「はぐらかし+強引」だ。

桜を見る会」の問題は、野党も攻めあぐねて嫌気がさし始めていたが、ここにきて、「桜を見る会」の前夜祭で参加者からの会費納入で足りない分を安倍氏側が補填して清算し、これを収支報告書に記載しなかったことが判明した。常識的に考えてこの事実を安倍氏が知らなかったという言い訳は通るまい。安部氏は潔く“降参”して適切に処理すべきだ。

安倍・菅両政権とも守勢に立たされているが、攻める野党も一本やりの揚げ足取り戦法で、本格的な政策論争には程遠い。ついでに言えば、菅首相は「Go To トラベル」事業は「経済を支える有力な事業だ」と言うが、これは経済対策ではなく支援・救済事業だろう。

つまり「Go To トラベル」事業に景気浮揚効果はない。それは本格的な経済対策・財政支出でも景気浮揚にあまり効果がなかったというバブル崩壊後の経済政策でも確認されている。菅政権に本格的な経済政策はまだない。野党にもそういう論戦を挑んでもらいたい。(2020・11・27 山崎義雄)