ババン時評 世界で断トツ若者自殺国日本

日本は、世界一若者の自殺の多い国だという。ここ10年間の自殺者は減少を続けて年間2万人程度となっているというが、昨年の自殺率は前年比で大きく増加したようだ。そして問題は、先進国の中でもひときわ目立つ日本の特徴が若者の自殺率の高いことで、この傾向は20年以上も続いている。

「令和2年版自殺対策白書」によると、昨年の自殺者数は2万169人(前年比671人減)となったが、世代別では唯一、10代の自殺が前年より増加した。また15~39歳の死因では自殺が最も多く、先進国では日本だけに見られる特徴だという。特に今回の新型コロナウイルス下では中高生の自殺が増えており問題視されている。

さらに、男女比でみると、男性の自殺者が女性のほぼ2倍となっている。しかしこれを自殺率でみると、目下の新型コロナの影響で男性より女性の自殺率が急増している。例えば昨年の11月は、男性の自殺者の前年比8%増に対して、女性のそれは19%増と2倍以上になった。

その理由はいろいろ挙げられているが、新型ウイルスの影響による、女性に多い非正規雇用者の失業増や、家庭内暴力(DV)の相談件数の大幅増などが指摘されている。その結果、失業による生活苦に加えてコロナ籠りの家庭内でストレスの蓄積が進み、DVの暴発も増えているということだろう。

人生観や宗教観に関する本が売れているともいわれ、多くの人が精神世界に誘引されてメンタルヘルスの弱化を招いていることも考えられる。つまり、精神修養とは真逆の無常観や無情観、厭世観にもつながり自殺を誘発するバックグランドとなっている恐れもある。

そして今、日本という国は若者にとって生きにくい国、とりわけ女性など弱者が生きにくい世の中になりつつあるのではないか。それに、若年者は日ごろの悩みの解消法を知らず、思い詰めて一直線に死に向かう傾向があるとも指摘される。なによりも今、心理的な孤立化を防ぐ取り組みが必要だ。

若者に「厭世観」が広がることは国の将来にとっても一大事ではないか。この問題は精神世界の問題である以上に、政治や社会制度に大きくかかわっていることは否定できない。コロナ後の健全な日本社会を構築するためにも、世界で断トツの若者自殺国日本の汚名返上を国の基本政策に据えて、多面的に自殺防止策を考えるべきではないか。(2921・1・10 山崎義雄)