ババン時評 韓国地裁のとんでも判決

韓国の裁判所が、とんでもない不当判決を出した。韓国人元慰安婦12人が日本政府に損害賠償を求めた裁判で、韓国のソウル地裁が原告の訴えを認め、1人当たり1億ウオン(約950万円)の賠償を命じた判決である。

この判決に対して日本政府は、国家は他国の裁判に服さないという国際ルールに反しているとして強く抗議している。正確に言えばこの判決は、主権国家は他国の裁判権から免除されるという「主権免除」の国際的な原則に反する判決である、と日本政府は一貫して主張してきた。

しかしソウル地裁は、日本が元慰安婦に対して行った「計画的、組織的、広範囲にわたる反人道的な行為」は、重大な人権侵害は許されないとする国際法上の「強硬規範」に違反しているから「主権免除」は適用できないとした。つまり韓国の裁判所は日本を裁けるという理屈だ。

これに対して主要各紙は、第2次大戦中のドイツ軍の行為を巡りドイツとイタリアが争った2012年の国際司法裁判所(ICJ)の判決を引用して、たとえ「強硬規範」に違反していたとしても「主権免除」を否定する理由にはならないとしている。

具体的には、イタリア最高裁が第二次大戦中にドイツで強制労働させられたイタリア人の訴えを認め、いったんはドイツ政府に賠償を命じた。これに対してドイツ政府が、イタリア判決は「主権免除」に関する国際法違反だとしてICJに逆提訴をし、勝訴して「主権免除」が認められている。

日本も今、韓国政府の出方を見ながら、ICJ提訴を考えているという。これはぜひやるべきだろう。だが韓国が応じなければ裁判は成り立たず、そうなる可能性もある。しかしそうなったら韓国が“逃げた”と国際社会に印象付ければいいだけの話であろう。

逆に、日本の政府筋にはICJで争えば慰安婦問題が蒸し返されることを危惧する声もあるという。しかし“大人の日本”がいつもそういう弱気な判断をするから韓国に付け込まれる。日韓間の問題として“小さな土俵”に乗ることをやめて、世界という“大きな土俵”で勝負すべきだ。

日本の真の狙いは、ICJ裁判で「主権免除」を勝ち取るよりも、そもそも元慰安婦問題と元徴用工問題解決の基本とすべき日韓間の基本合意、1965年の日韓請求権・経済協力協定と2015年の日韓両政府による合意を否定して一顧だにしない、韓国という不可解な国の正体を世界に知ってもらうことだろう。韓国に非を悟らせる道はそれ以外にない。(2021・1・12 山崎義雄)