ババン時評 習近平は歴代中国の新皇帝

共産党中国が特殊で厄介な国であることは論をまたない。それについて、中国出身でトランプ前政権の対中政策ブレーンだったマイルズ・ユー氏が、対中国で「幻想は不要」だと語っている。読売の電話インタビューに答えたもので、中国が共産党独裁体制である現実に向き合わなければ、外交政策は非現実的で危険なものに基づくものとなると述べ、中国を普通の国のように扱うことは根本的に間違っていると明快に断じた(読売3・4)。

それは今に始まったことではない。この「ババン時評」でも折に触れて取り上げてきた。そもそも中国の歴史は歴代の皇帝による一党独裁的な覇権国家だった。中国4000年の歴史などというが、日本の天皇ほどの正統性はない。モンゴル系民族に侵略・支配された元王朝満州民族に支配された清王朝など、絶えず異民族に支配されながら政権交代を繰り返し続けた略奪・分断国家である。

中国の皇帝は、紀元前221年に中国を統一した秦の始皇帝から、天の命ずる「皇」と地を支配する「帝」を合体した「皇帝」を自称するようになった。歴代皇帝は、新たな天命すなわち天の命ずるところによって旧政権を滅亡させて新たな国を建て、その支配者すなわち帝王となる。これは儒教の教えに基づくものであり、実態は暴力革命による政権簒奪でありそれが中国の歴史である。

それが現代にいたるまで変わることのない中国の本質である。そもそも現代にいたるまで中国に近代化の試みは一度たりともなかった。日本が明治維新で必死に近代化を目指していた時、中国は西太后が権力を掌握し泥沼の宮廷内闘争に明け暮れていた。日清戦争に敗れても権力闘争が続き、ついに中国は日本的近代化の道には進めなかった。

唯一、近代化を目指したかに見えた辛亥革命も、これを起こした孫文の狙いは日本が作った満州朝廷に変わる孫文朝廷の建設だったとされる。その後を狙った蒋介石の国民党は、米国の介入で共産党との国共連合政府を樹立。どうにか日中戦争に勝利した形になったものの、大戦後に国共内戦ぼっ発。敗れた国民党・蒋介石は台湾に逃れ、勝利した毛沢東共産党政権を実現して、中国古来の王朝に変わる「赤い皇帝」となった。

以来、中国の一党独裁が続き、今、習近平国家主席が強権をもって自らの地位と任期の制限を撤廃し、終身の国家主席を可能にした。毛沢東にならって習近平思想の学習を共産党に課した。すでに習近平は歴代中国の新皇帝である。(2021・3・4 山崎義雄)