ババン時評 文在寅相手にせず?!

文在寅韓国大統領が、日本の植民地支配に抵抗した1919年(大正8年)の「3・1独立運動」を記念する式典で演説し、「未来志向的な発展にさらに力を注がねばならない」として、日韓関係の改善に取り組む姿勢を示した。この手の発言はよくやるが、実行が伴ったことはない。徴用工でも慰安婦でも、いまだに「未来志向的な発展に力を注ぐ」気配がない。

「日韓関係の改善は双方の国益にかない、地域の安定にも資する」とか、「両国の協力と未来の発展に向けた努力も、とどまることなく行う」などの発言はまことに仰せの通りだが、「不幸な歴史を忘れない」「日本との歴史問題の解決に取り組み続ける」となって、いつもことはややこしくなる。

これらの発言はまさに空念仏で、具体的に日韓の関係回復に動く気配も歴史問題に取り組む気配も未来志向の気配も全くない。文大統領にはハナからそんな努力をする気はない。「韓国政府はいつでも日本政府と向き合い、対話する準備ができている」と言っているが、語るに落ちるで、まさに自らは動かない、何もしない、対話に応じるから日本が具体策を示せと言っているに等しい。

「韓国の成長は日本の発展にを支え、日本の成長は韓国の発展を支えた」とは笑わせる。日韓併合時代から戦後の経済成長まで、日本は韓国の成長に支えられて発展してきたというのか。どこからこのような誇大妄想的なストーリーが出てくるのだろうか。

それにしてもこのように、文氏が態度を軟化させたような発言をする背景には、2つの理由が考えられる。1つは、日韓の連携が日米韓の連携にとって欠かせないとするバイデン政権の圧力があったとみられることだ。もう1つは、大統領任期を1年後に控えて、めぼしい実績を残していないことだ。

弱気になった文氏は、大審院判決に基づく元徴用工に対する賠償金問題でも苦慮しているようだ。自らシナリオを描いたような大審院判決に縛られ、賠償金を韓国政府が肩代わりして解決しようと原告の説得を試みたりしたらしいが、反対があってうまくいかなかったようだ。

結論的に言えば、文大統領に日中関係の改善を期待するのは馬鹿げている。日中戦争時の近衛文麿首相が、「蒋介石を相手にせず」と声明を出して、歴史的なしくじりとなったが、今、残り任期1年の「文在寅を相手にせず」と宣言しても歴史的なしくじりとはならないだろう。文大統領にものを言ってもはじまらない。韓国への言い分は、世界に向けて、次いで来年の大統領選に臨む韓国民に向けて発信すべきだ。(2921・3・12 山崎義雄)