ババン時評 「米の属国日本」の気概を

バイデン米大統領は、先ごろ、就任65日目に開かれた初の記者会見で、中国についてこう言及した。「中国の目的は世界を主導し、世界で最も豊かで強力な国になることだが、私の任期中にそれは起こらない。なぜなら米国は成長し続けるからだ」-。多分これは、大方が認める真っ当な予見だろう。ただし、「私の任期中に」の一言は、(それを言いたかったのだろうが)失礼ながら余計な一言ではないか。4年間で中国が世界で最も豊かで強力な国になるのはムリだろう。

尊大・傲慢・無礼な中国は、先ごろの日米2プラス2会談で中国の人権問題などを話し合ったことにハラを立て、日本を「米国の属国だ」とコキ下ろした。日米豪印の連携強化にも「対中包囲網だ」と反発している。なぜ包囲されるかを反省せず、威圧を加えて連携を分断しようと画策する。

今、中国は、インドとの国境周辺では衝突を繰り返し、中国コロナに注文を付けたとして豪州に一方的な報復関税を課し、沖縄・尖閣では海警船が領海侵入を繰り返し、「自国の領海で法執行活動を行うのは正当であり、合法だ。引き続き常態化していく」と公言している。あきれた強弁で、あたまの「自国の領海」が間違っているのだから後の理屈は成り立たない。

さてこの中国はどこまで増長・肥大する気なのか。今後15年間で米国に対抗できる軍事力を持ち、武力で台湾を統一するとまで言っている。台湾進攻に踏み切った時に、米軍が手を出せないところまで軍事力を強化する。それが中国における軍事強化の最大の狙いだ。全力を傾注して「戦争の準備をしよう」と中国は公言している。

たまたまフランスの歴史学者エマニエル・トッド氏は、戦争は避けるべきで、対中経済制裁だけで中国の力を削げると提言する。そして「14億に迫る人口大国の中国は、並外れた超大国に変容するのか。私はそうは思わない。中国人の出生率は低下し続け、高齢化は加速し、中国人は裕福になる前に老いてしまう」と見る。そして、「中国の輸出に依存する経済は危うい。中国に科学技術ブームは訪れない。世界の科学技術二大国は米国と日本だ」と断言する。(『自由の限界』中公新書)。

今こそ「米国の属国だ」とナメられた日本の気概を中国に示すべきだろう。思いがけなく?明快で厳しい対中姿勢を明らかにしたバイデン政権に呼応して、日米連携強化のために応分の働きをしなくてはなるまい。米の態度表明を歓迎するだけでなく、日本としても重要な同盟国として安保協力推進の決意を示す具体的な対策を提示すべきだろう。(2021・4・3  山崎義雄)