ババン時評 安保音痴・改憲忌避の立民

立憲民主党を安保オンチというのは、当たらないかもしれない。日本を取り巻く安全保障環境の悪化は立民党議員も知らないはずがない。しかし立民には強烈な改憲アレルギーがある。だから憲法改正の是非を国民に問う「国民投票法」改正の国会論議を忌避し続けた。その結果、約3年、計8国会にわたって間欠的なダラダラ審議が続くことになった。そして今月、ようやく改正国民投票法が成立した。立民党も、これ以上の抵抗は党にとって不利だと読んで賛成に回ったためだ。

改正内容は、百貨店や駅など公共の場での「共通投票場」の開設、航海中の乗組員の「洋上投票」の拡大、投票場に同伴できる子どもを「幼児」から「18歳未満」に拡大、以下、投票方法や選挙人名簿に関する改正など、有権者の利便性を高める措置だ。ほとんどはすでに国政選挙では導入済みの施策で、3年も国会論議を忌避する理由など考えられない改正点だ。

そこで立民党が、今後の抵抗のよりどころとしたのが、国民投票前の各党によるテレビCM規制の強化だ。つまり各党の資金力の違いなどで、国民に対する各党の宣伝が不公平にならないようにということだ。このCM規制すら立民は政争の具に利用するつもりらしい。つまり立民は、改正国民投票法に「付則」を設けさせることによって、CM規制などを今後「3年をめどに検討」することになった。

この玉虫色の「付則」を巡って、自民党では、CM規制の検討と並行して改憲論議を進めることは可能だとする見方を打ち出したが、立民党は、CM規制などの結論が出なければ、改憲論議はできないという主張を強めている。この先3年もCM規制論議を続けるとなると、改憲への一里塚である国民投票法の改正に都合6年の歳月を要することになる。

目を周囲に転じれば、中国の拡張主義的行動はますますエスカレートしている。今月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、ついに中露の脅威を共通認識とする共同宣言を出した。こうした時局とはまるで関係ないような、改憲論議なし、国民投票法ののんびり改正は、すべて立民党の“主導”によるものである。こんなことでは間違いなく立民は国民に見放されるだろう。

さらに今後は、CM規制以上に大きな問題として、初期の目的だった自然災害対応だけでなく、昨今の新型コロナウイルス、そして今後の安保行動にまで絡んで、国の危機に対処する緊急事態条項が中心的な改憲論議の的となってきた。目前に迫る都議選、衆院選に向けて、国民は、これまで「安保音痴・改憲忌避」を続けてきた立民党が、今後の改憲論議にどう取り組むのか、改めて注視することになるだろう。(2021.6.19 山崎義雄)