ババン時評 夫婦同姓婚は日本の文化

今の法律では、結婚届を出すに当たって、夫婦いずれの姓を選ぶかは二者択一で、それぞれが自分の旧姓を選択して届け出ることはできない。この夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は「両性の平等」などをうたった憲法に違反するとした、都内の男女3組による訴訟で、最高裁がこれを却下し、夫婦同姓の現行法は「合憲」だとした。これは約5年前の最高裁における同様裁判の判決と同じだ。

申立人側は、5年前の同様判決後、選択的夫婦別姓の導入を求める地方議会の決議が相次いだことや、世論調査で導入を容認する人が過去最高となったことなどを挙げて、前回の「判決の合理性は失われている」と主張した。しかし最高裁は「社会情勢の変化を考慮しても判断を変更する理由はない」とし、「夫婦同姓には家族の一体感醸成などの意義がある」とも指摘した。

今回の最高裁判決について、朝日新聞は、同じ姓でなければ婚姻届けを出せない、という日本の法制度は「世界で日本だけ」だとして批判・反論を展開している。さらに「結婚した夫婦はどちらかの姓を選ばなければならないという日本の制度」も批判するが、現実には旧姓使用を認める企業が増えるなど変わりつつある。

たしかに同性婚は日本だけかもしれない。近隣諸国でも韓国や中国は夫婦別姓婚だ。しかし両国の原則は婚姻時に夫側の姓を選ぶことだ。その上で、妻側の姓を選ぶことも可能だというものだ。しかし今も圧倒的に夫側の姓が選ばれるという。

そして今、中国では、夫婦どちらの姓を子供に名乗らせるかが問題になっているという。国が一人っ子政策だった時代は圧倒的に夫側の姓が多かったが、二人っ子政策になってからは、一人目の子には父親の姓、二人目の子に母親の姓をつける例が増えている。さらに姓の選択権は子供にもあるとなると実にややこしいことになる。

朝日新聞は、最高裁判決は憲法違反だとして「夫婦同性婚反対」の記事を矢玉のように打ちまくっているが、読売新聞は、最高裁判決は「妥当である」と鷹揚に?構えている。最高裁は、夫婦同性婚は、男女平等をうたう憲法に違反するとまでは言えず、夫婦同姓か別姓かという制度設計は国会の仕事だとしているのだ。至極妥当な判断ではないか。それに、「世界で日本だけ」遅れているというが、世界の趨勢に従うことが必ずしも正しいとは限らない。第一、一国の風習や文化はグローバリズムになじまない。(2021・7・2 山崎義雄)