ババン時評 他人の褌で相撲をとる中国

先ごろ、中国の習近平主席は、中国共産党創設100周年の式典演説で、中国が世界第2位の経済大国になったのは中国共産党の歴史的業績だとして、ますます「一党支配体制」を強化する姿勢を示した。中国は今、「共産党支配」と「経済力強化」をどちらも欠かすことのできない国の2本柱として、その強化の上に世界を凌駕する「軍事大国」を目指しているのだ。

しかし、なんでも党の業績にする中国共産党だが、中国が経済大国になれたのは、一国一党独裁共産主義とは相入れることのない自由主義のルール、すなわち“他人の褌”を利用したからである。たぶん資本主義の借用(盗用?)も中国共産党の歴史的業績になるのだろう。

党創設の毛沢東人海戦術による強引な経済政策で失敗し、多くの餓死者を出し、人民の恨みを封じる文化大革命で国を混乱させた。毛沢東死去の後、“他人の褌”借用を考えたのが鄧小平だ。彼は毛沢東思想をタナ上げにして市場経済体制への移行を試み、社会主義市場経済の形を整え、そして国内に経済特区を設けて外国資本の導入に進む。日本からは製鉄や多くのモノづくりの技術導入を進めた。日本も、中国の自由主義社会への仲間入りを期待して支援したのだ。

さらに、中国共産党にとって外交面における最大の成果は、国連の常任理事国入りだろう。だが第二次大戦後、戦勝国となった中国の政府は、蒋介石率いる国民党による「国民政府」だったから、蒋介石政権の中国が常任理事国となった。しかしその後、毛沢東らの中国共産党との国共内戦となり、蒋介石が敗れて台湾に逃れ、やむなく現地で「国民政府」を開設したのだ。

以後、両者が中国の正統政府を主張して譲らず、中国共産党政府は何度か国連に理事国交代を訴えたが叶わなかった。ようやく1971年の国連総会で、アルバニア等の提案による「国府追放・北京招請」決議案が採決されたのだ。賛成国には中国の息のかかる中小国が多く、民主主義の基本ルールである「多数決」という最も強力な“他人の褌”で常任理事国入りが決まったのだ。

また、改革政策が始まった1979年以降、日本は中国に対して、無償資金協力、技術協力のODA(政府援助)を約40年間で計3兆6500億円余り拠出した。これはインフラ整備などで中国の近代化だけでなくおそらく中国の軍事力増強にも役立った。しかし中国は、いまだに「偉大なる開発途上国」を自称して自由主義社会の“庇護”を受けている。

こうして中国共産党は結党以来、内にあっては国民の大量殺戮と宿敵への冷酷な政治粛清を繰り返しながら、外に対しては自由主義社会の価値観、ルール、資本を(技術盗用も含めて)フルに利用してきたのだ。そして今、アメリカを凌駕する軍事大国を目指している。自由主義社会は結束して中国の横暴に当たるほかないではないか。(2021・7・7 山崎義雄)