ババン時評 現実型次期韓国政権への期待

いま中国の若者は無気力になっていると言われるが、韓国の若者は政治を動かす原動力として注目されている。ソウル、釜山の両市長選で与党候補を惨敗に追い込んだのも若い世代だった。韓国内でもすでに文在虎大統領の動向に関心は薄く、焦点は来年の韓国大統領選だがここでも若い世代の動きが注目される。ところが、残り任期のわずかな文大統領は、まだ未練がましく自分の実績ポイントを挙げようとあがいている。

報道によると文大統領は、東京五輪開催式に合わせた訪日について、「日韓首脳会談の成果が予見できるなら訪日を検討してもいい」との意向だという。つまり、菅首相との初の対面会談は、「短時間でなく」しっかりと会談し、例えば元慰安婦、元徴用工問題でも、日本側からなんらかの新提案があり「成果が予見できるなら」文大統領の訪日を検討してもいいというわけだが、これは「検討」以前の「見当」違いだろう。

文大統領の了見違いは毎度のことだが、韓国の裁判も同様で、今年に入って元慰安婦、元徴用工問題では、日本に非ありとする文政権の判断は国際法違反の疑いありとする判決が連続した。にもかかわらず今度のような“牽制球”を投げた上で来日するとなれば、元慰安婦、元徴用工問題では、日本の変わらない立場を改めて説明されて、逆に首脳会談の効果どころか“マイナス成果”を背負って帰国せざるを得ないという、実に気の毒な結果になるのではないか。

ともあれ、肝心なのは次期大統領選だが、有力候補では、保守系の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検事総長世論調査のトップで注目されており、これを追うのが左派系与党陣営の李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事だという。日本としては、東京五輪・パラの大会組織委によるネットの日本地図に“点”ほどの竹島が入っていることを騒ぎ立てた李在明氏より、歴史は歴史として現実的に前向きに日韓問題を解決しようとする尹錫悦氏に期待するのは当然だ。

しかし、敵の旧悪を暴くのが“しきたり”の韓国だから、与党陣営も尹氏のあれこれを詮索するだろう。だが尹氏は、検事総長時に自分が捜査して失脚に追い込んだ曺国(チョ・グク)前法相の二の舞になることはおそらくないだろう。中道的な保守派の尹氏と、文大統領の左派政権側候補の李在明氏が厳しく評価され、若者世代が決着をつけることになりそうだ。ぜひ日韓双方にとって望ましい政権誕生となってもらいたい。(2021・7・10 山崎義雄)