ババン時評 韓国文大統領の悪あがき

岸田内閣発足に当たり、海外から多くの声が寄せられたが、韓国文在虎大統領からは、書簡で「韓日関係を未来志向的に発展させるために共に努力していこう」と言ってきたという。文大統領は、今春の「3・1独立運動」記念式典でも「韓日は未来志向的な発展にさらに力を注がねばならない」と表明した。この手の発言はよくやるが、徴用工や慰安婦問題で、ついぞ「未来志向的な」動きはない。

徴用工では、今年になって韓国地裁による日本企業への資産売却判決が出された。反日的な世論を煽り、司法に影響を与えた文大統領の責任は重い。政権の末期になって文氏は、日本資産の現金化は「日韓関係に望ましくない」と言ってみたりしたが、一向に具体的な解決策を示さない。よくもまあここまで、できもしない空念仏を唱えられるものだ。

本当に解決する気があるなら、解決策は見えているではないか。いまさら「被害者中心主義」を唱えて被害者救済が必要だと主張するなら、1965年の日韓協定による「完全かつ最終的な解決」を順守し、補償を日本に求めるのではなく韓国政府が救済すべきだ。

さらに不可解なのは、先月、文大統領は国連総会で演説し、朝鮮戦争の「終結宣言」に取り組む意向を表明した。つまり1950年に勃発して53年に米国中心の国連軍と中国北朝鮮連合軍との間で結ばれた「休戦協定」に終止符を打ちたいというわけだ。

つまり、戦争当事者の韓国・北朝鮮・米国の3カ国か、あるいはそれに北朝鮮を実戦力で支えた中国を加えた4カ国の合意で「終結宣言」を行いたいというわけだが、文大統領の本心は毎度のとおり、その中心的な役割を担いたいというところにある。滑稽なのは、休戦協定への署名に韓国が加わっていなかったことで、当事者の資格が疑われることだ。

なにより、半世紀以上も微動だにしなかった南北朝鮮の停戦状況に、残り任期7か月の文大統領が決着をつけられるはずがない。第一、文氏は大統領就任以来取り組んできた北朝鮮との関係改善にもメドが立たない状態で、物事の後先も考えずに朝鮮戦争の「終結宣言」を言い出す神経が分からない。

文氏には北朝鮮を恐れる気配もないように見える。南北統一を図れば北の核兵器は共通の財産になるとでも考えているのではないか。北の相次ぐ新型ミサイル発射実験も気にせずに米朝の中を取り持つとか、ますます米中対立の激化する中で、両国の関係改善を仲介しようとする神経が分からない。政権末期における文大統領の動きは見苦しく、悪あがきにも見える。(2021・10・9 山崎義雄)