ババン時評 中韓の若者層 悲観的な生活観

NHKテレビで、日本の若い女性たちが新宿・歌舞伎町の片隅にたむろして春をひさぐドキュメントを見た。戦後でもなかろうに、身を売り物にしなければ食えない世の中ではないはずだ、しかもヤクザがらみでもなく自らの意思で街角に立つとは―、などと思うのは年寄りの偏見、認識不足だろうか。

彼女たちの個別のケースを見ると、新型コロナによる失業などで生活苦に追い込まれ、孤立に陥り、自殺志向に走るケースも増えている。厚労省によると、長年減少傾向にあった自殺者数が、令和2年には若年層で大きく上昇し、特に20代女性の自殺増が断トツで30%台の増加となっている。

目を海外に転じれば、中国では「寝そべり主義」という言葉が流行り、若者の間で「寝そべり族」が増えているという。これは、簡単に言えば“六不主義”で、「家を買わない」「車を買わない」「結婚しない」「子どもを作らない」「消費しない」「頑張らない」という6つのことを“しない”ことだという。

そして、「誰にも迷惑をかけない、最低限の生活をする」ことを指す。これは、大変な受験競争を勝ち抜いて良い大学を出てもロクな仕事にありつけない中国の多くの若者の心情だ。そして上記の6つのことを「しない」というより「できない」レベルの生活を強いられるというのが現実なのだ。

一方、韓国の場合も似たような現実があり、だいぶ以前から「スジョ階級」という言葉が流行っている。スジョとはスプーンのことで、スプーンには金銀銅土のスプーンがあり、そのどれを使うかは生まれつき決まっているというのがスジョ階級論で、それを口にする多くの若者には、自嘲と諦めがある。

事実、一流大学を卒業しても一握りの一流企業に就職することは難しく、大半の大学卒以下は中小企業に就職するかパートしかない。したがって韓国の貧困男子は結婚を諦め、貧困女子は身を売る者も少なくない。韓国の某議員は、国内の目から逃れて海外で売春する韓国女子は10万人に上ると指摘した。

ひるがえってわが国は、コロナ下で若年層、特に若い女性が上述のような状況におかれていることを重く受け止めるべきだろう。中国・韓国の若者層の悲観的生活観は国の将来を危うくする。わが国に伝播させてはならない危険信号として、他山の石とすべきではないか。(2021・11・1 山崎義雄)