ババン時評 女性の自己実現と意識改革

なにかにつけて男女格差が問題にされる世の中である。たまたま昨年の衆院選で当選した女性は45人、一昨年に閣議決定された「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」施行後初の総選挙だったのだが、なんと女性の国会議員比率が9.7%となり、わずかながら後退するという皮肉な結果となった。国会議員の国際順位をみてもわが国は190カ国中168位と芳しくない。

立憲民主党は、2030年までには国会議員、候補者、党職員の女性比率を30%以上にすると宣言しており、その手始めというわけか、泉健太新代表のもと、男女同数の党執行役員人事を決めた。6人の新執行役員を加えた泉代表以下12人の男女比は半々の6人ずつとなった。

おそらく男性社会に進出して女性が働き始めた昔から現代にいたるまで、女性は男性の補助的役割で働いてきたのであり、地位や収入をはじめあらゆる面で格差があり、女性が男性より有利だった時代はない。もちろん個別の職業で言えば看護の仕事では女性優位、などという例はある。

ジェンダー平等が世界的に問題になったのは1980年代だと言われるが、いまだに格差の解消にいたらず、日本政府が2025年までに女性の国会議員を35%まで引き上げる目標を掲げているのだから、半世紀かけてもジェンダー平等は実現しないということになる。

内閣府によると、男女共同参画に関する4か国・日本、アメリカ、スウェーデン、ドイツ)における「社会において男性が優遇されている原因」のトップは各国とも、「男女の役割分担についての社会通念・慣習・しきたりなどが根強いから」を挙げた者の割合が最も高いという。日本の実情と大差ない。

アメリカでは何十年も前から、女性が昇進して役員やトップに上り詰めようとしても目に見えない「ガラスの天井」に阻まれると言われてきた。しかし実際に、企業社会のみならず、政治や経済活動面で男に伍して活動したいと考える女性がどれだけいるのだろうか。

いくら男女平等の世の中が進んでも、男は定職について収入を得る、女は家庭を守って子育てするのが社会の基本だ、と思っている人間が少なくないのではないか。男に限らず女も多分にそう思っているとしたらは、社会進出による女性の自己実現などを唱えても空念仏に終わるだろう。

もしそのあたりに男女平等格差の原因があるとするなら、まずは女性の意識改革が先ではないか。男社会が手を貸して女性のポストを増やしてやっても男女平等は進まないだろう。立民の泉代表らが役員の数を半々にしてみても女性議員数が増えることはなく、今年の参院選の票集めの役に立つこともないだろう。(2022・1・1 山崎義雄)