ババン時評 コロナ下で平常心を保つ工夫

新型コロナウイルスの拡大下で、うつ病や自殺が確実に増えている。ゆううつな気分に襲われることは誰にでもあるが、コロナ禍の閉塞状況ではいっそう、ゆううつ感が助長される。それが進行すれば「うつ病」になり、うつ病が嵩じれば、「自殺」という最悪の手段を選ぶことにもなる。

うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスなどを背景に、脳がうまく働かなくなっている状態」だと厚労省の説明にある。一日中気分が落ち込み、何も楽しくないといった「精神症状」から、不眠、食欲不振、疲労感などの「身体症状」に進み、日常生活に支障が生じて「うつ病」となる。

そこで考えられるのは、「うつ病」で「脳がうまく働かなくなる」以前のメンタルケアが必要だということだ。たまたま、コロナ禍の状況にあって「すべては変化する中、心を正しく調えよう」と説く、臨済宗円覚寺派の管長 横田南嶺師の論稿を同派の小冊子で目にした(『円覚』(令和4年正月号)。ここで横田氏は、白隠禅師の体験を紹介する。

白隠禅師は、仏の教える「日常の活動を離れて静かなところで坐ってばかりいた」と述懐。しかしその結果、「日常のちょっとしたことにも胸が塞がり心火が燃え上がる始末で、日常生活の中での工夫は少しもできず、何をしていても驚いたり悲しんだり、心も体も常に怯弱で両脇にはいつも汗をかき、目にはいつも涙を浮かべ、修行によって力を得るなどということは、まったくなかった」。

そういう反省を経て白隠禅師は、「何をするにしても、常に心気を下腹部(臍輪気海丹田=せいりんきかいたんでん)に充実させること」、「どんな時も、常にたゆまずこれを続け、一身の元気をおのずと丹田に充実させること」、「仕事の合間、客人と対応する時も、日常生活のどんな時も、常にたゆまずこれを続けるならば、一身の元気は自ずと丹田に充実」するのだと説くに至る。

白隠禅師はまさにうつ症状を体験したのだが、精気の丹田充実でそこから見事に脱出することができた。臍下丹田(せいかたんでん)とは、特別の臓器を指すのではなく、へそ下3寸(約9センチ)辺りで、精気の集まるところとされ、丹田に力を込めろとは昔からよく言われてきたことだ。

凡俗の私も、若いころからそれを心掛けてきた。もちろん白隠禅師の丹田入力や悟りの深みには比べようもない。しかし私は、専門紙誌の記者・編集者として、いわゆる世の中の偉い人にお会いする前や人前で話をする時などに、動悸や恐れを予防するための丹田入力をやってきた。ついでに言えば、偉い人に気おされないために、相手の目ではなく鼻の頭を見て話す工夫も開発した。

新型コロナも、今年はいよいよ第6波が襲ってきそうな状況である。だがコロナ下の抑圧状況やストレスに負けてはならない。どのような世の中の変化があろうとも、変化に翻弄されることのないように、常に自分の心のありように目を向けて、平常心を保つ工夫が大事ではないだろうか。(2022・1・16 山崎義雄)