ババン時評 チラシにみる共産党の安保観

新聞の折り込み広告の中に、「日本共産党 渋谷区議団ニュース 2022年 新年号」が入っていた。そこにはこんな文言が躍っている。「改憲・大軍拡・敵基地攻撃能力にNO! 9条生かして対話による平和を 日本維新の会改憲国民投票を主張している」

さらに「岸田政権の危険な動き」について、「9条に自衛隊を書き込む 日本が攻撃を受けなくてもアメリカと共に戦うことが可能に」「GDP比2%への大軍拡すすめる 今年度補正予算で史上初の軍事費6兆円突破」「敵基地攻撃能力の保有を検討 専守防衛を捨て違憲の先制攻撃を可能に」

こうした文言がチラシ広告的に踊っており、日本共産党の主張が要領よく?刺激的にまとめられているので引用してみた。しかし正直なところ、共産党の言い分は現実離れしている。渋谷区民ではないが、都民の1人として、チラシに掲げる諸問題に次のような素朴な疑問を呈してみたい。

チラシの内容をまとめると、①改憲・護憲の問題(9条生かして対話による平和を、など)、②軍事費拡大の問題(GDP比2%への大軍拡、など)、③敵基地攻撃能力の問題(専守防衛を捨て違憲の先制攻撃、など)、④日米安保法の問題(アメリカと共に戦うことが可能に)などとなる。

まず①「改憲・護憲の問題」では、▽国の守りが無くていいのか。▽自衛隊が「戦力ではなく実力」という解釈が憲法違反だというなら、護憲では済まず改憲論が出てくるのは当然ではないか。▽護憲の「不戦」を世界に約束して、理不尽な戦争を仕掛けられても抵抗しませんということでいいのか。

②軍事費拡大の問題では、▽日本の防衛予算は米露中印に次いで先進国中の5位だが、世界第3位の経済大国日本が5位の軍事予算を持つのは「超軍拡」か。▽中国や北朝鮮の脅威に対して防衛力抜きの「対話による平和」、中国を含めての対話による平和の実現が可能なのか。

③敵基地攻撃能力の問題では、▽「専守防衛を捨て違憲の先制攻撃」はNOというが、ミサイル・電磁波など開発の進む攻撃兵器に対応する新たな「専守防衛」が必要ではないのか。▽中国や北朝鮮から2分程度で飛来する防御不能極超音速ミサイルを、まともに受けることでいいのか。

日米安保法の問題では、▽日本だけの力で国を守れるのか。▽日米安保がなくて国を守れるのか。▽限定的に「日本が攻撃を受けなくてもアメリカと共に戦うことが可能に」なったのは日米安保関連法によるが、応分の防衛能力で相互協力をするのは当然ではないのか。

以上がチラシに対する疑問だ。北朝鮮が最新ミサイルをおもちゃのように打ち上げ、中国の台湾進攻や尖閣への恐れも強まっている。これを平和的な外交努力で解決できるのか。こんな現実離れ、浮世離れした教条主義的な主張が通用するとは思えないのだが―。(2022・2・1 山崎義雄)