ババン時評 韓国 李在明候補の錯誤

よその国の話とは看過できない韓国大統領選が目前に迫る。おかしな歴史認識で物議をかもしてきた李在明(イ・ジェミョン)候補者が、ここにきて日韓関係に前向きの姿勢を見せたりするが、それはライバル候補、尹錫悦(ユン・ソギョル)前検事総長の票を食う算段に過ぎない。

李氏の奇妙な歴史認識の一つが、日本ならぬ自国の初代大統領・李承晩(イ・スンマン)への批判だ。彼に言わせれば、李大統領は韓国駐留米軍の後ろ盾で左派勢力を駆逐し、日本が韓国統治下に遺した資産や官僚制度を基盤に大韓民国を樹立(1948年)させた親日売国奴だという。

これは日本憎しの李氏が李元大統領に貼った親日レッテルだが、はたして公海に「李承晩ライン」を設定(1952年)し、日本の漁船を数百隻拿捕し、数千人を抑留し、数十人の死傷者を出した李承晩を親日売国奴と呼べるのか。弁護士の肩書を持つ李候補に判断がつかないはずがない。

自国政治の歴史認識が怪しいだけならいいが、李候補には見当はずれの反日言動が多い。その一例が、「侵略国家である日本が分断されなければならないのに、日本に侵略された被害国家であるわれわれがなぜ分断という憂き目に合わなければならないのか」という発言だ。

李氏は、敗戦国が分断されるのは歴史の常だとも述べているが、それは戦勝国の分捕り合戦の結果がそうなるだけで公正なルールでも何でもない。一国の大統領になろうとする李候補が、日本も分断されるべきだったと他国の歴史に異を唱えるのは異常であり非難されてしかるべきだ。

さらに、加害国の日本が分断されないのに被害国の韓国がなぜ分断の憂き目にあうのか、との言い分には驚く。韓国の分断を招いたのは誰か。それは、終戦5年後の1950年に、金日成労働党委員長率いる北朝鮮が、突如38度線を越えて韓国に侵略戦争を仕掛けことが発端だ。

そして北朝鮮が露の同意と中国の支援を受けて南半島を大きく侵略し、これに対して米国などの参戦支援を受けた韓国が、38度線まで盛り返して停戦協定締結に至った。つまり朝鮮半島に内戦を起こし、半島を分断・固定化したのは今、李大統領候補が思いを寄せる北朝鮮だ。

にもかかわらず李候補は、文現政権と同様に北朝鮮への思いが強い。文政権の後を受けて北との関係を強め、過去の日本と同じように韓国に居座るつもりでいる(と李氏が見る)「米国占領軍」を追い出したいらしいが無理だろう。日米韓の連携も台無しになる。

韓国の若者は今、職業と住まいを求めているが、文政権と同様これも解決できないだろう。李氏にできるのが日米韓関係の悪化だけだとすれば、韓国の安全保障も経済もおかしくするだろう。特に韓国の無党派・若者層がそれに気づくべきだ。(2022・2・24 山崎義雄)