ババン時評 劣化が進む?日米同盟

テレビ討論(BSフジ「プライムTODAI」3・22)で共産党小池晃氏が、司会者に(ウクライナ侵攻の)「プーチン大統領を止められるか」と聞かれて「止められない」と即答していた。「ではどうするのか」と問われて、(戦争を防ぐためには)「核兵器を無くするしかない」と持論?を唱えていた。「止められない」相手を外交だけで説得し核を捨てさせられるのか。討論で他党の現実論から小池氏が浮き上がるのは当然だ。

ところで、日米同盟は揺るぎないものであり、アジアを重視する米国から見て最も頼りとする同盟国は日本だ。日米韓の枠組みの中で、たとえ米国が親中国的な韓国に不信感を持つことがあったとしても、日本に不信感を持つことはあり得ない、と大方の日本人は思っている。が、ひょっとするとそれは単純な日本人の過信、“うぬぼれ”に過ぎなかったのかもしれない。

リチャード・アーミテージ元米国務副長官による、辛口の日本批判がでた。氏は、「同盟国としての日本は依然として、米国の他の同盟国の軍事的水準より多くの面で遅れている」と言い、例えば米韓両軍では、いったん事ある時の指揮・命令系統は統一されているが、日米の指揮系統はバラバラだと言うのだ(読売3・27「地球を読む」)。

そして日米同盟が遅れている原因は何かと問い、それは、北大西洋条約機構NATO)や、米韓、米豪などの同盟は、少なくとも幾つかの分野で、日米韓よりも深い水準で統合されているが、日米の同盟関係は遅れをとっており、特に重要なのは日米間に「連合作戦司令部」がないことと、将来を見据えた軍事力の「連合能力開発」の立ち遅れだと指摘する。

短期的には「連合作戦司令部」を設置せよと提言する。手始めに、台湾有事に責任を負う作戦指揮官を日米それぞれ任命し、同じ場所に配属するべきだと言う。危機時は指揮統制が複雑になるので、両国の司令官に戦時の権限を与え、中央で一緒に指揮に当たらせるべきであると言うのだ。

長期的には「連合能力開発」で、兵器システムの共同開発で量産を可能にし、新兵器の配備コストを下げよと提言する。日本に対艦ミサイルの既存技術があるのに、米国は一から作り上げようとしている。米国には新型戦闘機について既存技術があるのに、日本は独自開発を追求している。日米同盟には新たな大規模開発の計画が存在しないとも指摘する。

岸田首相は、先の防衛大卒業式で訓示し、ウクライナ戦争も引いて、わが国の防衛力強化を抜本的に見直す方針を強調した。現在の安保基本戦略は2013年に策定されたままで、対中露戦略は融和を図る“半身の構え”であり、現実離れは明白だ。アーミテージ氏の辛口提言は米国が望む日本への“注文”ではあるが、聞くべきところは聞き、年末の安保戦略改定に向けて論議し、日米同盟の進化を急ぐべきだ。(2020・4・8 山崎義雄)