ババン時評 ♪時の流れに身をまかせ

人はよく、「歳は取りたくないものだ」と言うが、嘆いても足を踏ん張って抵抗しても、人は時の流れに逆らえず歳をとって行く。それならいっそ #^^時の流れに身をまかせ」 世の移ろいを眺めながら気楽に生きるのも悪くない。ということで高齢の友人・知人ABCDさんのホットニュースを紹介する。ABCさんはいずれも高齢女性。Dさんは高齢男性である。

Aさんは、世界的に有名だった服飾デザイナーの #森英恵さん が96歳で亡くなったという新聞記事を見て、驚いたと同時にハラを立てた。あんな美しい森さんを「老衰のために死去」したとは何事かというわけである。そしてAさんは、「老衰」と書かれるのは絶対イヤだ。新聞には載らないまでも、私の場合は「急死」としてもらいたい、と言うのである。

Bさんは、いわゆる独居老人だが、現役では空を飛ぶ職業で、停年退職後はお稽古ごとの先生を長く続けた人だ。そのBさんが、最近、マンションの自宅で転倒。家具に頭を打ち付けて失神した。意識を取り戻し、ようやく痛みも治まったので病院に行き、頭部のレントゲン検査を依頼した。ところが医師は、Bさんの話をしっかり聞いた上で、Bさんがけっこうな道のりを病院まで歩いてきたことと、事の成り行きを正確に説明したことを挙げて、レントゲン検査の必要なしとの診断を下したという。

Cさんは、数カ月前、オレオレ詐欺で500万円を失った。後で息子と話してようやく詐欺にかかったことを知った。息子さんも大いに驚いたが、母親を責めなかった上に、オレのことを心配して500万円も盗られたのかと言ってくれたという。Cさんに夫の遺産があったゆとりもあろうが、息子さんも偉い。ところがこの美談には続きがある。ある日突然、警察署から電話があった。「アーもしもし」とかかってきた警察からの電話に、Cさんはこれこそ詐欺かと身構えたが、話を聞くと、別件で逮捕した犯人が、Cさんへの詐欺についても自白したというのである。なんとそっくり500万円返ってきたという。

D君は、現役は大手産業紙の記者だった。昨年暮れ、前立腺がんで84歳で亡くなった。定年後は劇団に入って楽しみ、テレビのCMにも出た。映画にもチョイ役で出演したというので、仲間と映画館に足を運んだが、彼の出演シーンはカットされていて、銀座の高級クラブのママ?に見送られて車に乗り込む雄姿をスクリーンで見ることはできなかった。古い話だが、そのD君が定年を迎えたころ、老後の青春?を楽しもうと長年密かにため込んできた1000万円を、満期になったから他に運用してくれと郵便局員が相談に来て奥方にバレ、まるまる取り上げられてしまった。その奥方も数年前に亡くなった。気のいい男だったが、晩年は癌に苦しんだ。

まさに人生いろいろだ。勝負は下駄を履くまで分からないとか 、 #棺を覆いてこと定まる などと言うが、それも有為転変の“実力者”の場合であり、そんな生き方には無縁だが先の大戦に片足かけた世代として、限られた余生を「^^♪時の流れに身をまかせ」、変転する世相を眺めながら気楽に生きられたら、それも悪くないと思う。(2022・9・2 山崎義雄)