ババン時評 打ちひしがれない節約生活を

 10月から一気に値上げラッシュが始まる。呑兵衛さんの懐を直撃しそうなビールやハムなどをはじめ、飲食料品の値上げが6500品超に及ぶという。値上げ幅は先月9月の2.7倍の急上昇になる。値上げする側は“値上げズレ”して値上げ発表に抵抗感がなくなっているともいわれるが、値上げの波をモロにかぶる消費者側はたまったものではない。

家計の消費支出は、2020年で2人以上の勤労者世帯の1カ月平均が約30.6万円、前年に比べて1.8万円の減少となったという。涙ぐましい節約の結果だが、今回のような怒涛の値上げラッシュではそんな切ない節約効果もけし飛んでしまうことになる。

サラリーマンのお小遣い調査はいろいろあるが、1カ月平均は3万円台に乗っているものの、もっとも多いのは3割近くの人で1万円以下だという。厳しいというより寂しい実態のようだ。かりに3万円の人の場合は、今回の物価値上がりで3千円近く目減りすることになる。ほぼ1回分の飲み代が減ることになり、人付き合いも控えなければならない。

節約のコツについては、本もネット情報もふんだんにあるが、節約に取り組むに当たっては、節約方法以前にまずは心構えの方が大事ではないだろうか。仮にも悲壮感につながるような暗い気持ちで取り組むようでは節約努力も長続きしないだろう。うまく行かないどころか生活苦に打ちひしがれて心身を病むことにもなりかねない。

節約の第一は食費だが、大事な食事を貧しいエサにしてはならない。心に余裕をもって、肉類も野菜類も同じような安価なものを繰り返し購入し、同じような料理を繰り返し作り続けることが節約につながる。定番の料理でも、味付け、盛りつけ、食器を変えるなどで、見た目がおいしい料理になる。鉢植えで育てた食用ハーブの葉っぱ一枚を皿に添えるだけで豊かな気分になれる。食器類はなるべく豊富にそろえておいて使い回しを楽しむ方がいい。

夫婦なら二人の節約共同作戦が大事だろう。「私は家計のやり繰りに苦労しているのに夫は無駄遣いする」などとグチったり心理的に追い込まれては家計の節約はうまく行かない。夫の小遣いを削ろうとすると夫婦仲が悪くなるだけである。逆に、夫の誕生日とか何かと理由をつけて例えば夫の好きな刺身とか天ぷらなどを奮発して喜ばした方が無駄遣いを減らす相談もうまく行く。

要するに、何事も精神のゆとりが大事だが、節約の基本は大らかな気持ちでやること。切羽詰まった気持ちで水道、電気代でケチケチし過ぎるような節約は精神的に良くない上に、金額的にもあまり節約効果があるとは思えない。大らかな気持ちでモノを欲しがらない。欲しいモノは平然と眺めて買わない。どうしても必要なモノだけは買う。結局は理不尽な物価高に打ちひしがれない気持ちで頑張るしかないということになるだろう。(2022・10・2 山崎義雄)