ババン時評 反撃能力Vs専守防衛の呪縛

いわゆる「反撃能力」は、先制攻撃と誤解される「敵基地攻撃能力」を自民党が無難に言い換えた用語だが、どちらにしても、そもそもは1956年当時の鳩山一郎内閣が「我が国が緊急不正の侵害を受け、攻撃が行われた場合、座して死を待つべしというのが憲法の趣旨とは思えない」としたところから始まっているといわれる。

したがって「反撃能力」は、長いことくすぶり続けている重要な論点だが、そろそろ決着をつけなければならないだろう。たまたまNHK日曜討論(10・16)で、与野党の安全保障政策の担当者が「反撃能力」の保有の是非をめぐって意見を交わした。発言のポイントを拾ってみるとおおよそ次のようなことになる。

賛成派では、①自民党の小野寺元防衛大臣は、「相手の攻撃の仕方が変わっており、それに備えた攻撃能力が必要だ。対話を拒否してミサイルや核で脅してくる国には、反撃能力を持たざるを得ない」としている。②公明党の佐藤外交安全保障調査会長は、「反撃能力を持つにしても専守防衛で必要最小限の措置をいかに確保していくかが問題だ」と反撃能力保持に一定の理解を示している。③維新の会の青柳国際局長は、「反撃能力の保持は抑止力のためで、相手をどう怖がらせられるかが問題だ」と反撃能力の中身を議論する必要性を述べた。

中間派では、④立憲民主党の玄葉元外務大臣は、「相手が攻撃をためらい結果として戦争を止める力になりうる必要最小限の反撃能力は地に足を付けて党内で検討していきたい」と党内論議の必要性を述べた。⑤国民民主党の前原元外務大臣は、「ほかに手段がない場合は敵基地攻撃も認められるというのが議論のベースだ」として敵基地攻撃の論議を認めながらも専守防衛の重視を述べている。

反対派では、⑥共産党の山添政策副委員長は、「外交努力を強めるべきだ。事実上、先制攻撃まで可能にする反撃能力は認められない」と反対の姿勢は明快である。⑦れいわ新選組の櫛渕副幹事長は、「危機回避の努力をせずに議論を進めると専守防衛を脅威対向型の防衛に変更させ形を変えた改憲になる」と反撃能力保持に反対している。

こうしてみると、「反撃能力」保持に前向きなのは与党自民党公明党だけである。長年慎重だった公明党がやや肯定的な姿勢を取りはじめている。維新の会も同調している。中間派の立憲民主は「党内で検討していきたい」と党内をまとめきれず、国民民主は「専守防衛」にしがみつく。反対派の共産は「反撃能力は認められない」と言い、現実世界を見ようとしない。れいわ新選組も同断だ。

敵基地攻撃ならまだしも、基地を離れた移動式ミサイル発射の場合はその緯度・経度を測定・入力して反撃しなければならず、現実には難しいと言われる。そのミサイルをいかに抑止するか。受け身の解釈による「専守防衛」の呪縛から脱して「反撃能力」の構築を考えなければ日本人の生命・財産が危機にさらされる。(2022・11・3 山崎義雄)