ババン時評 徴用工で尹大統領韓国も迷走か

やはり韓国という国は厄介だ。このほど韓国政府が開いた元徴用工問題をめぐる公開討論会(1・12)が大もめにもめたという。韓国最高裁が日本企業に命じた賠償金の支払いを韓国政府傘下の財団が肩代わりするという尹錫悦政権の解決案に原告側が強く反発したようだ。尹政権と岸田政権の下で、急速に解決に向けて動き出したようにも見える徴用工問題だが、果たしてうまく行くのだろうか。

たまたまBSフジの「プライムニュース」(1・20)がこの問題を取り上げた。そこで、この問題の発端である2018年に韓国最高裁が出した元徴用工への賠償を新日鉄住金(現・日本製鉄)と三菱重工に命じる判決について、出席者の櫻井よしこ氏が、判決の根底に戦前の36年に渡る日本の韓国統治が不法であったとする不法統治論があるとして、これは国際法や日韓の過去の経緯から考えても間違いであり、この歴史認識は尹政権も変わらないと指摘する。

たしかに、その統治の歴史も踏まえて、日韓両国間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決されたことを確認する」と規定する1965年の日韓合意がなされているのだから、統治の歴史を持ち出して日韓合意を否定するのはスジが違う。だいたい歴史問題と外交上の合意をごちゃまぜにするようでは近代的な国家とは言えまい。最高裁判事にその区分けがつかないとは理解に苦しむ。

別の出席者、李泳采氏(恵泉女学園大学大学院教授)は、今回の尹政権の解決案は韓国側が肩代わりして全部引き受ける内容で、日本企業は謝罪もしない、お金も出さないとなると、韓国政府は国民を説得できず、破綻するイメージが強いと発言した。だいたいこの人も毎度、歴史認識にこだわって65年合意を否定し、韓国政府のスポークスマン的発言しかしない御仁のようだ。

黒田勝弘氏(産経新聞ソウル駐在客員論説委員)は、日韓関係を改善しようとする尹大統領への期待があると言う。今回の解決案は、韓国側とすれば画期的な決断、日本側としては過去の協定で解決済みだが、補償は韓国側が責任を持ってやる、プラスアルファで日本も何かしてくれることはないかということで日本側も積極的に受けとめて歩調を合わせる必要があるとする。

韓国側は日本に対して「謝罪と誠意ある呼応」とか「謝罪と寄与」を主張しており、「プライムニュース」ではこれを「呼応措置」ととらえ、これに李氏は、韓国に進出している日本企業からの募金。そして日本が輸出規制措置を撤回して韓国をホワイトリストに入れること。さらに当事者たちは日本企業からの謝罪を訴えているとする。

これに対して桜井氏は、尹大統領はわずかの差で勝った。次にまた左翼政権ができないという保証はない。私は脱反日を掲げる尹政権を前向きに捉えているが、日本国の国益をちゃんと守らなければいけない。妥協すべきでないところは断じて妥協してはならない、と発言している。日本は65年の日韓請求権協定で徴用工問題は「解決済み」だとする立場を崩すことなく、韓国側の具体的な出方を待つしかないだろう。(2023・1・22 山崎義雄)