ババン時評 日本共産党の本性チラリ

やはり共産党の正体は分かりにくい。先ごろ著書で党首の公選制を求めたジャーナリストでもある党員が除名処分を受けた。これを「言論封じだ」などとして批判した大手マスコミに、長年トップの座にある志位和夫委員長が噛みついた。「朝日に指図されるいわれはない」といった塩梅である。同党の花形田村智子政策委員長やしんぶん赤旗も志位委員長に歩調を合わせて反撃に出た。

その、しんぶん赤旗は電子版で2021年(6・27)に、中国の弾圧で廃刊に追い込まれた香港の日刊紙「リンゴ日報」について、「許されぬ言論弾圧」として、「香港の言論の自由を踏みにじった中国政府の蛮行に強く抗議します」といい、「言論、報道の自由は人権保障の国際取り決めに定められた権利。国際人権規約は口頭や印刷など自ら選んだ手段で情報、考えを伝える自由も含まれると規定しています」としている。

いったい共産党とはどういう公党なのか。志位委員長は昨年4月、党本部の集会で、憲法9条に対する党の立場について、「我が国に対する急迫不正の主権侵害が起こった場合には、自衛隊を含めてあらゆる手段を行使して国民の命と日本の主権を守り抜くというのが日本共産党の立場だ」「憲法9条は無抵抗主義ではない。9条の下でも個別的自衛権は存在する」と述べた。自衛隊違憲だと言い続けてきた共産党がいざとなったら自衛隊は国を守れというのだ。

この志位発言が批判されるのは当然だが、志位委員長がいきなりこんなことを言い出したのは、ウクライナ戦争などがあって自衛隊違憲論だけでは国民の支持も得られず野党共闘もムリだと読んだからだろう。とはいえ、志位委員長がいきなり変節してこんな発言をしたわけではない。2000年の党大会では、日本が急迫不正の主権侵害を受けた場合などには「自衛隊を国民の安全のために活用する」と決議しているのだ。しかし04年の党大会では国民の合意での憲法第9条の完全実施、すなわち自衛隊の解消をはかると党綱領に明記したのだから分からなくなる。

こんな具合に、憲法9条に対する共産党の姿勢が理解しにくくなった源流をたどれば、戦後の憲法制定時に戦争放棄を説く吉田茂首相に対して、共産党の先達野坂参三衆院議員が「自衛権の放棄は民族の独立を危うくする」と噛みついて以来だ。吉田首相も間もなく自衛権容認に変わり、その後自衛権に基づく9条解釈は保守政権の基本姿勢となったが、共産党のほうは9条解釈を巡って迷走を繰り返してきた。状況次第ではどうにでも変節するというのが共産党の本性なのだろう。

あり得ない話だが、仮に共産党が政権の座に着いたら、たちまち改憲して自衛隊を合法化し、言論統制を強め、香港紙「リンゴ日報」のように共産党のお気に召さないマスコミは廃刊に追い込まれる。そして志位委員長は中国の習近平のように任期無制限を目指し、国家体制は中国化するだろう。もちろんこれはめでたい(2月旧正月の)初夢ならぬ悪夢である。(2023・2・25 山崎義雄)