ババン時評 不死のA I、死にゆく人間

人間レベルの文章力を誇るAI(人工知能)のチャットGPTが話題を呼んでいる。そこで小生も尋ねてみた。「人間が死ななければならない生物学的な理由を教えてください」とひねった質問をしてみたら、「人間が死ななくても生物学的な理由は、いくつかあります」と“曲解”してこう答えてくれた。

「細胞老化:私たちの体の細胞は、分裂を繰り返すことで新しい細胞を生み出しますが、その過程で不可避的にダメージを受け、老化します。細胞老化により、私たちの体の機能が低下します、最終的にはそのような疾患につながる結果になります」。次いで「免疫系の衰え:加齢に伴い、私たちの免疫系の機能は低下します。これにより、感染症や癌などの病気に対する免疫力が弱まります」。そして「遺伝子の変異:私たちの遺伝子は、私たちが生まれる前に形成され、それ以降、ダメージを受けて修復されます。しかし、細胞分裂の過程で、遺伝子の変異が起こります」-。そのあと「これらの重要性が臨むことで、私は年を重ねるごとに、病気や痛みに苦しむことが増え、最終的には死亡することが一般的です、なければならないと断言します」と意味不明の文言が続いた。

重ねて、「生物学的に見て、人間が死ななければならない積極的な意味は」と問いかけたら、「だから人間は死ななければならないのですか」と挑戦的で?こう答えてくれた。「人間が死ななければならない理由は、生命のサイクルに関する自然の法則に基づいています。生物は成長し、繁殖し、そして死ぬというサイクルを繰り返すことで、生態系を維持しています。個体の持つ資源を他の生物が使えるようにすることで、生態系の循環を促進する役割を持っています。人間が死ぬということは、自然の法則に従っているということです。資源の再利用など、生態系にとって重要な役割を持っています」と言い、続けて「断固として、人間が死ぬことについての哲学的考察や宗教的な信念に基づく様々な意見もあります」と、別枠にも見える形で編集途上の裏舞台を見せるような文言がある。

GPT先生の回答は、立派にレポートなどに使えるレベルだが、自らが学んだ引用文献も示さず盗用の恐れもある。私がこういう質問を試みたのは、手元に小林武彦著『生物はなぜ死ぬのか』(講談社現代新書)があったからだ。同書は、生物学的見地から私たちが死ななければならない重要な意味を問い、有限の命を持つからこそ、「生きる価値」を共有できると説く一書だが、本文の終わりをAIの話でしめくくっている。「人間は死ぬがAIは死なず無限にバージョンアップを繰り返していく。『進歩したAIは、もはや機械ではありません。ヒトが人格を与えた「エイリアン」のようなものです』―。

「人を本当の意味で理解したヒトが作ったAIは、人のためになる、共存可能なAIになるのかもしれません。そして本当に優れたAIは、私たちよりもヒトを理解できるかもしれません。さて、そのときに、その本当に優れたAIは一体どのような答えを出すのでしょうか? ―もしかしたらAIは自分で自分を殺す(破壊する)かもしれませんね、人の存在を守るために」-。(2023・4・25 山崎義雄)