ババン時評 チャットGPTよどこへ行く

近時、世の中にあふれる情報やデータを自在に収集・加工して新たな情報やデータを生み出す「生成AI」と呼ばれ人工知能(AI)の功罪が論議の的になっている。その中心をなすのが、米新興企業オープンAI社が開発して昨年11月に無料公開を始めたばかりの「チャットGPT」だ。このチャットGPTは、あらゆる質問や指示に対して極めて自然で精度の高い文章を生成し回答してくれる。その能力は恐るべきもので、これまで発表された例でも、キーワードを与えれば小説も書くし読書感想文などもお手のもので、研究者が「共著者」に指名するレベルの研究論文まで執筆してくれる。

それだけにチャットGPTが生成する著作物には著作権侵害などのリスクがある。そこでチャットGPTの危険性について、直接チャットGPTに聞いてみた。最初に、①「チャットGPTを活用する場合の危険性について教えてください」と質問したら、数秒の後に「おっと、エラーが発生しました」というコメントが出て記事作成が中止となった。そこで少し質問を穏やかにして②「チャットGPT活用上の留意点について教えてください」と聞いてみたが、アンサーは同じく「おっとエラー」であった。それではとチャットGPTを含む生成AI(人工知能)に範囲を広げ、③「生成AI活用上のリスクについて教えてください」と聞いてみたが、回答は同じく「おっとエラー」で中断。これも範囲を広げて、④「生成AI回答の中立性・公平性について教えてください」と聞いてみたが、やはり「おっとエラー」で終わりだった。

すっかりチャットGPT先生のご機嫌をそこねたかと思い、一般論にして、⑤「情報の中立性・公平性について教えてください」と聞いたら、以下のように意味不明の字句をちりばめながらも答えてくれた。1.中立性:確実性を確保するためには、以下の点について留意する必要があります。・情報・復・主張と証拠。2.公平性:公平性を確保するためには、以下の点について留意する必要があります。・多・バイア・インク。―こんな調子で角度を変えながら9回まで質問を続けたが、「おっとエラー」と返され、ついに10回目で降参し、「失礼な質問を続けてすみませんでした。今日はここまでに致します」と謝って終わりとした。

チャットGPTが教えてくれなかったので?、ネットで「チャットGPTを活用する場合の危険性について」検索すると、冒頭にこう出てくる。「チャットGPTは、オンライン上の大量の情報を読み込んだ上で、指示に対して新たな文章を生成する。 誤った内容でも自然な文章のため気づきにくく、偽情報が拡散する恐れがある。 ほかにも、学習データに著作権のある文章が含まれていた場合、表現がその文章と同じだったり、似通ったりして著作権を侵害する可能性がある」。

あるいはまた、「生成AIの活用に伴い、機密情報・個人情報の漏洩、誤った情報の混入、差別・偏見・問題発言の混入、著作権の侵害など、さまざまなリスクが顕在化し、訴訟に発展する事例も生じています」と出てくる。この程度の作文はチャットGPTにできないはずはないのだが、自分で自分の首を絞めるような馬鹿な真似はできないから「おっと、エラーが発生しました」とコメントして記事作成を中止する気持ち?はよく分かる。はてさてAI世界を席巻しつつあるチャットGPTよどこへ行く(2023・5・31 山崎義雄)