ババン時評 中国の野望は必ず沖縄に向かう

 覇権主義中国の野望については、直近の「ババン時評」で、「中国は必ず尖閣を盗りにくる」(R6/2/3)、「中国は尖閣を盗り沖縄を狙う・上」(R6/2/6)、「中国は尖閣を盗り沖縄を狙う・下」(R6/2/10)と立て続けに3本書いた。今回は補足のような形でもう1本書いておきたい。

まず前回取り上げた中国社会科学院の張海鵬氏の論文は、そもそも琉球(現沖縄)は日本の領土ではないとして、「1879年の日本による琉球併合は違法であり、国際法に反していたと結論づけることができる。カイロ宣言ポツダム宣言は、最も重要な国際文書であるが、どちらも琉球が日本の領土であることを否定している。1972年以降、日本は沖縄県を再編したが、国際法上の琉球の独立主権の問題は解決しなかった」とする。

米政府は1972年、戦後、米国の施政下に置いていた沖縄を日本に返還した。日本は単純に沖縄の本土復帰を喜んだが、返してもらったのは日本の持つ沖縄への「主権」ではなく「施政権」だったというのである。この解釈はあまり知られていない。日本が無条件降伏を受け入れたポツダム宣言は、日本の主権が及ぶ範囲を北海道、本州、四国、九州の4島と、連合国が指定する島嶼(とうしょ)に限定し、そこに沖縄は含まれなかったからだ。日本は1951年のサンフランシスコ平和条約で台湾を放棄したが、帰属先は明示しなかった。だが、1972年の日中国交正常化の共同声明は、台湾の中国帰属を明確にしたポツダム宣言を順守するとうたった。

話が変わって、日本国債貿易促進協会と2023年7月に訪中した沖縄県玉城デニー知事の動きが日中双方の関心を集めたことについて、当時の朝日新聞デジタル(2023年7月5日)はこう伝えている。玉城氏は訪中について「沖縄と中国の長く深い交流の歴史を温めていくことが、交流発展の礎になる」と説明した。玉城氏は、訪中に先立って7月4日、明清代に琉球から訪れ、客死した使節らを埋葬したとされる琉球国墓地跡を訪問。雑木林に囲まれた碑の前で線香を上げ、集まった日中の報道陣に「中国と沖縄のつながりをしっかり結び、平和で豊かな時代をつくるため努めたいとお祈りした」と語った。

中国は、台湾問題でアメリカと日本が「一つの中国」政策の空洞化を狙っていると反発し、戦後の領土画定に関する国際的取り決めの順守を強く求めている。こうした状況下での、玉城氏の単純な中国容認姿勢には問題がある。本稿を書きたかった意図の一端も玉城氏のノー天気な中国観の指摘にあった。今こそ本気で沖縄の立ち位置と沖縄防衛を考える時ではないか。(山崎義雄 R6/5/3)